謎の美少女現る?
「あのさ、夏乃。その子に直接嫌って言われたら、それは仕方ないと思うよ。けど、とりあえず聞くだけ聞いても良くない? 本人に確認しなきゃ分かんないじゃん」
「……うん、それはそうなんだけど……でも、何て言うか……あの子はほんとに内気で、いきなり知らない人と遊ぶとか、絶対できないって言うか……」
斎宮さんのご友人たる女子生徒、三河さんからの問いに、覚束ない口調でどうにか答える斎宮さん。そして、同じく斎宮さんのご友人たる男子生徒、小林くんも三河さんと同じ意見であることがその表情から如実に伝わる。
ともあれ……微かに届く会話から、ある程度流れは理解できた。つまりは、三河さんと小林くんが他校の友人と一緒に来ている斎宮さんに、その友人も含め一緒に遊ぼうと持ち掛けた。具体的には、どちらか一方の部屋で集まりカラオケを楽しもう、ということだろう。
……ただ、それにしても……うん、もうその発想がすごいなぁと。皆が共通の知り合いであれば、一緒に遊ぼうとなるのも解る気がしないでもないけど……全然知らない人ですよね? 斎宮さんの友達。なのに、その人も含め一緒に遊ぼうって……うん、これが僕みたいなコミュ障と、トップカーストに在しますリア充の方々との厳然たる違いというものなんだろうね。
……ともあれ、今は感心してる場合じゃない。どうにか恙なく彼女をあの場から遠ざけなければ。
だけど……どうする? 言わずもがな、ここで僕が出ていくのはアウト。嘘が判明してしまう上に、僕との関係性に関し何かしらの誤解――具体的には、僕とそういう関係にあるとの誤解を与えてしまう可能性も皆無とは言えず……そうなれば、斎宮さんにとって百害あって一利なしだ。かと言って、当然ながらこのまま手を拱いているわけにもいかない。……いったい、どうすれば――
「――あっ、ごめんなさい」
「あっ、いえ……その……」
卒然、僕に謝意を伝えたのは少しばかり年下と思しき少女。理由は、僕とぶつかってしまったから。だけど、謝るのはむしろ通路を妨害していた僕の方で……まあ、いつものごとくほとんど声は出てくれないわけだけど。
「……あっ、あのごめんなさい! それでは!」
すると、再び謝意を告げ駆け足で去っていく女の子。そんな彼女の背中に、僕は――
「……あっ……あの!」
「……えっ?」
――それから、数分後。
「……あの、その……夏乃、ちゃん……」
「…………え?」
そう、おずおずと話し掛ける。すると、ポカンと呆気に取られた様子の斎宮さん。まあ、それもご尤も。何故なら、振り向いた視線の先には――小さな黒のシルクハットに金髪のツインテール、白を基調としたフリル付きの可愛いコスチューム、そして右手にはピンクのステッキ――いわゆる、魔法少女に扮した僕が立っていたのだから。




