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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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ギリギリセーフ?

 ……うん、ずっと緊張しっぱなしでした。



 最後のフレーズを歌い終え、ようやくほっと安堵の息を洩らす。曲の長さは確か4分53秒――なので、およそ5分といったところだけど……うん、こんなに長かったかな? 5分って。


 だけど、まだ完全に緊張が消えたわけではない。一応、声は出たものの……果たして、斎宮さいみやさんの反応は――



「……えっと、なんて言うか……正直、すっごい意外と言うか……上手いね、新里にいざと

「…………え? あ、ありがとうございます!」


 おずおずと視線を移すと、まず視界に映ったのはポカンと口を開き呆然とした様子の斎宮さん。そんな思いも寄らない反応に、むしろ僕の方が呆気に取られて……えっと、ほんとに?



「……あっ、ごめん。驚き過ぎて曲入れるの忘れてた。でもまあ、仕方ないか。新里のせいだし」

「……えっ、あっ、ごめんなさい……?」

「ふふっ、冗談だよ。そもそも、別に謝ることじゃないし。まあ、驚き過ぎたっていうのはほんとだけど」


 その後、悪戯いたずらっぽい笑顔でそう言って、すぐさま曲を送信する斎宮さん。きっと既に決めてはいたのだろう。

 そんな彼女の選んだ曲は、80年代に発表され今なお人気の高い昭和のポップソング。SNSの影響もあり、現在いま若い人達の中でも前世代の曲が流行っていたりするみたいだけど……そういった事情を除いても、意外という感想は全くなく、それよりも――


「……うっわ、なんかちょっと緊張してきた」


 そう、少しはにかんだような笑顔を見せる斎宮さんがほんと可愛……うん、止めよ。なんか、こっちが恥ずかしくなってきたし。



「……ふぅ。どうだった? 新里」

【はい、すごくかわ……いえ、すごく素敵でした!】

「……うん、その言いかけた言葉がすっごく気になるんだけど……でも、ありがとっ」


 それから、数分経て。

 そんな僕の感想に、少し不服そうな様子を見せつつも最後には笑顔で謝意を告げてくれる斎宮さん。そんな彼女の反応に、ほっと安堵の息を洩らす。言いかけた言葉に関しては……うん、僕には些か恥ずかしいといいますか……でも、まあいいよね? 僕なんかが言わずとも、今まで数多の人達から幾度となく聞いてる言葉だろうし。


 ともあれ、本当に素敵だった。何と言いますか……すごく可愛いんだけど、どこか色気も感じさせる大変魅惑的な……あっ、可愛いって言っちゃった。まあ、口には出してないしセーフだよね?



 その後、交互に数曲ずつ歌い、少したどたどしいデュエットなんかもしたりして……まあ、たどたどしいのは主に僕だけだったけど。ともあれ、そんなこんなで数十分が経過して――


「ねえ、新里。折角だし、採点で勝負してみない? 3回勝負で、2勝した方がバニラアイスを一つ奢ってもらう、とか。もちろん、無理にとは言わないけどね」

「……えっと、そうですね……」


 不意に切り出された斎宮さんの提案に、些か返答を躊躇う僕。……そう言えば、前にも似たようなことがあったよね。お洒落になった僕を、クラスメイト達が何人くらい僕だと認識できるかという……まあ、あの話は結局流れたけど。ひょっとして、意外と勝負事が好きなのかな?


 ただ、それはともあれ……返答を躊躇ったものの、実際にはこれといって断る理由もない。それは、僕が勝つ自信があるから――なんて、思い上がりも甚だしい理由などではなく……彼女としても、多少なりゲーム要素があった方が楽しいと思って提案してくれただけだろうから。賭けの対象も、このお店で一番安いバニラアイス――これなら、お互いさしたる負担もないだろうし。なので――


「……はい、僕は構いま――」



「――いやーほんと久しぶりだよな、カラオケ。テスト期間、歌いたくてウズウズしてたわ」


「「――っ!?」」


 刹那、部屋なかの空気が一変する。扉越しに届いたその声は、その後に続く幾つかの声は……紛れもなく、一年A組のクラスメイト――斎宮さんのご友人達の声そのものだったから。






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