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季節は巡り
麗らかな春の陽光に包まれる、四月上旬――そんな、穏やかな昼下がりのこと。
「――それでは、改めて宜しくお願いします」
「はい、校長先生。不束な身ではありますが、精一杯務める所存です」
そう、深く一礼しゆっくりと校長室を後にします。何のお話かというと――およそ一週間後に控えた、入学式における新入生代表挨拶のご依頼に関してです。
ところで、余談ではありますが……例年のごとく、昨年の候補者――即ち、入学試験における最優秀成績者へ例の挨拶を依頼したところ、当校史上初めてお断りされてしまったとのこと。まあ、それが何方かなど確認するまでもないでしょう。