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いや、だって……あの場所だよ?
ともあれ――それから数日後、彼のもとにメモが届いたとのこと。大事な話があるから、放課後待っています――そんな旨の記されたメモだったようで、俄にあたしの胸は騒ついたけど……待ち合わせの場所を聞いて、ふと別の可能性に思い至った。
いや、だって……あの場所だよ? 一階と二階を繋ぐだけの、あの階段のとこだよ? まあ、限りなく人目に付きづらいという点でいえば、そういう用件には最適な場とも言えそうだけど……そもそも、あんな場所を知ってる生徒自体、相当に限られているのではないかと。あたしだって、彼が教えてくれなきゃきっと卒業まで知らなかったと思うし。
そして、タイミングから考えてみても――これは恐らく、彼を誘き出す氷兄の策ではないかと踏んだ。そういうわけで、彼が待ち合わせ場所へと向かった少し後にあたしも出陣――そして、あの辺りの校舎裏にひっそり身を潜め窓からこっそり中を……うん、紛うことなき不審者だよね。