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……よもや、僕の名前まで――
「…………なん、で……」
そう、呆然とした表情で呟く斎宮さん。……うん、それはそうだよね。自身が告白するはずだった相手が、どうしてか突如あちらから訪れたのだから。……ただ、いずれにせよ――
「……あっ、その、では僕は――」
「ああ、別にそのままで構わないよ。確か――新里朝陽くん、だったよね?」
「……へっ? あ、はい……」
席を外します――そう伝え立ち上がろうとした矢先、穏やかな微笑で告げる郁島先輩。……えっと、僕がいても良いの? 斎宮さんにお話があるのでは……まあ、先輩自身が良いと仰るなら。
ただ、それにしても……よもや、僕の名前までご存知とは。よもや、地味で陰キャラかつコミュ障で定評のこの僕の名前まで……いや、そもそも定評になるほど知られてないか。ともあれ、この分だとひょっとして全校生徒の名前をご存知で――
「――さて、早速だけど夏乃ちゃん。もし良かったら――俺と、付き合ってみない?」