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……うん、どうやら――
ただ、それにしても……驚いたのは、面接したその日にすぐさま斎宮さんの勤務が始まったこと。事前にほぼ採用が決まっていたとは言え、そうそうある場合ではないと思うのだけど……いや、あるのかな? 単に、僕が知らないだけで。
ともあれ、僕の休憩時間が終わるとほぼ同時、斎宮さんと共に厨房に入ることとなった。先輩としてしっかり教えてあげてね――そう、何故か軽くウインクをしつつ僕に告げる蒼奈さん。……えっ、僕ですか? ご存知かと思われますが、話せないですよ、僕。
だけど、そんな僕の困惑もお構いなしにお客さんの対応へ戻る蒼奈さん。そして、学校での僕に対する様子とは違い、控えめに『よろしく』と呟き軽く頭を下げる斎宮さん。……うん、どうやら僕が教えるしかないみたいです。……出来るかな?