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……あっ、そうか。
「…………へ?」
卒然、馴染みのある柔らかな声が届く。その方向へ視線を向けると、果たしてそこには――
【……あの、斎宮さん。どうして、こちらに……?】
些か驚愕を覚えつつ、雑貨屋さんの白い壁にそっと凭れていた斎宮さんへと尋ねてみる。と言うのも、彼女も今日勤務していたのだけど、時間は午後4時まで――つまりは、今から2時間以上前には終了しているわけで。
もちろん、いつ何処にいようと彼女の自由だし、今ここにいること自体が何ら不自然なわけでもない。……ただ、彼女のこの様子だとまるで……あっ、そうか。
【……あの、斎宮さん。きっと郁島先輩は受験勉強など大変お忙しかっただけで、斎宮さんと会いたくなかったわけでは決してな――】
「うん、なんでだろうね。慰められてる理由に全く覚えがないんだけど」