幸せな未来
「…………は?」
唐突な僕の申し出に、ポカンと口を開け呆然とした様子の日坂くん。……まあ、そうなるよね。そもそも、僕なんかに応援されたところで彼にメリットなんてないだろうし。
……それでも、応援したいと思った。もちろん、これがとんだ矛盾だということは重々理解しているつもりだ。どころか、彼女に対する裏切りだと言われても当然で。何せ、郁島先輩への想いを叶える協力をすると言いながら……今、こうして他の誰かの彼女への想いを応援すると言っているのだから。
だけど、それでも一つ言い訳をさせてもらえるなら……何も僕は、彼女の……斎宮さんの幸せに蔑ろにしたいわけじゃない。僕は今後も彼女の恋に出来うる限り力になる所存だし、その想いが成就すれば僕は本当に嬉しくなると思う。
それでも……彼女が幸せになる可能性は、何もそれ一つというわけでもないと思う。だって、日坂くんはこんなにも――中学一年生の頃から今までずっと、こんなにも一途に彼女のことを想っている。そして、長いとは言えずとも交際期間があったということは、斎宮さんも少なからず彼に好意を抱いていた時期があったということ。だとしたら――再び相思相愛となり、二人ともが幸せになる未来だってきっとあると思うから。