118/477
理解は出来るのだけども
「……あー、そのことね。うん、もちろんちゃんと覚えてるよ。覚えてるんだけど……ほら、会長って三年生だし、受験で忙しいだろうから、あんまり迷惑とか掛けられないかなって……」
すると、僕の問いに視線を虚空へと移し半ば呟くように答える斎宮さん。その様子は何処か覚束なく、さながら僕を見ているようで。
確かに、彼女の言い分は理解できる。郁島先輩が受験なさるのであれば、今は彼にとっていっそう集中すべき期間――迷惑を掛けたくないという彼女の気持ちは、至極自然なものと言えよう。
……ただ、そうは言っても、先輩が受験生であることは何も昨日今日からの話じゃない。それこそ、告白の相談を受けたあの時点で、一般的にはとうにそういう時期だと言えるはずで。なので、こう言っては申し訳ないのだけども……正直、今の彼女の言葉は、些か今更という気がしなくも――
「――よう、随分と仲良さそうだなお二人さんよ」