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言うまでもないこと
「……えっと、何て言うのかな。前にも言ったと思うけど、もともと素材は良いの、新里は。でも……うん、こう言ったら悪いなとは思うんだけど……ほら、周りの子達から見れば、新里って根暗で全然喋らない印象が強かったと思うの」
「……えっと、その……申し訳ありません」
「……いや、なんで貴方が謝るの」
そう、呆れたように言う斎宮さん。……うん、自分でもなんでかなとは思う。ただ、なんか申し訳ないなぁって。
「……でも、最近はそうじゃなくなったの。きっと、自分では気付いてないだろうけど……以前より随分と明るくなったんだよ、新里は」
「……斎宮さん」
そう、柔らかな微笑を浮かべ告げる斎宮さん。そんな彼女の言葉に……今度は、否定できなかった。とは言え、他の人達の目にも明らかなほどに明るくなれたとはまだ思えない。
……それでも、あの頃から――具体的には、一ヶ月くらい前から……それまでの自分より、少しずつでも前向きになってきたことは、流石に自覚しないわけにはいかないから。……そして、それが誰のお陰かなんて……うん、それこそ言うまでもないよね。