表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

聖女様

 客観的に見た聖女様。本編と読み比べていただければ幸いです。

 私はセリアム公爵家の侍女、アンジェリン・ワージーです。お嬢様の専属としてお傍に仕えております。


 お嬢様はまさしく公爵令嬢、気高く美しく、王太子殿下の婚約者として非の打ちどころがありません。未来の王妃殿下に相応しい淑女でいらっしゃいます。


 が。

 ですが。

 そうなのですが。


 何ですか、あの王太子。チャラいわ軽いわ、昔とちっとも変っていません。


 私が初めて王太子殿下にお会いしたのは、貴族学園の同級生としてでした。

 必死に勉強してAクラスに入った私の努力をあざ笑うかのように、当時まだ第一王子だった殿下は、ナンパして来たのです。この私を。

 一言でいえば邪魔でした。子爵令嬢、それも跡取り娘だった私の人生に王族など必要ありません。卒業後はすっぱり縁切りできた筈でした。それなのに。


 お仕えする方の婚約者では、無視したくてもできないではありませんか。お嬢様のお供として、日常的に顔を合わせる羽目になったのです。


 定期的に開かれるお二人のお茶会。公式行事でのエスコート。折々の花束とメッセージカード。

 婚約者として当然の交流はきちんとなさっています。模範的な行動と言えるでしょう。

 そのたびに私にお声がけをなさらなければですが。


 お嬢様のお許しを頂いてさんざん切って捨てても、殿下の不謹慎なお声がけは止まりません。この上は不敬罪覚悟で実力行使に出るしかないと、思い詰めていたのですが。


 パタリと。殿下からの接触が無くなりました。

 うっとうしさから解放されたのは喜ばしいのですが、そうも言っていられません。肝心のお嬢様との交流まで無くなってしまったのです。


 お茶会はキャンセル、花束もメッセージカードもなしのつぶて。挙句の果てに、次の王宮の夜会のエスコートを断って来たのです。

 あの王太子ごときが、ウチのお嬢様をほったらかして別人のエスコートをすると。


 言語道断、(ゆる)せる筈がありません。


「今度の夜会は、聖女様の御披露目のために、昼に開催することになりましたわ。夜会とは言えませんわね」


 お嬢様は淑女らしく感情を乱されません。なんと素晴らしい方でしょう。

 ですが、夜会の開催時間をずらすとは。これは聖女様の我儘でしょうか。


 そもそも聖女様とは何者でしょう。今まで聞いた事がありません。もしかして王太子殿下のエスコート相手でしょうか。


 情報収集のため、私は耳を澄ませました。

 公爵家には、様々な方が出入りなさいます。壁際に控えているだけで、高貴な方々の談笑と言う名の駆け引きだって聞き放題です。

 直接聞かなくても、侍女の噂話ネットワークの威力は甚大です。




 聖女様のお名前はミリア・ランドール子爵令嬢。元々はミリア・ツオーネ男爵令嬢だったそうですわ。何でも父親の実家に乗り込んで、家を乗っ取ったのだとか。

 当主の死後、後継者の叔父が家督を奪う。とても分かりやすい図式ですわね。


 父親のオスカー・ランドール子爵は、元は王都警備隊出身だとか。なのに何故かトマーニケ帝国との戦役で手柄を立てて、国軍総司令部に入ったそうです。

 公爵家の領軍の方々が絶対おかしいと(いきどお)っていました。


「一兵も指揮していないのに、どうやって手柄を立てたというんだ」

「司令部所属でもなかったそうだぞ。王都から補給物資を運んだだけだと。誰でもできる任務じゃないか。戦闘経験無しで三階級特進だぞ。不正があったに決まってる」

「立てた手柄と言うのも、怪しいものだ。誰かから横取りしたのじゃないか。でなきゃ、高位貴族でもないのに出世し過ぎだ」


 三階級特進。それが異常であることは、軍事の素人の私でも分かります。

 二階級特進でさえ、戦死された方限定の栄誉。生者は一階級しか昇進を許されないはず。


 どうやら、ランドール子爵は野心家のようですわね。どんな政治的な駆け引きを駆使したのか。娘を聖女とやらに祭り上げて、何を(たくら)んでいるのか。


 お嬢様に仇成すもの、決して許容できませんわ。



 

 結局、昼に開催された問題の夜会は、王太子殿下がお嬢様をエスコートなさいました。

 旦那様が抗議したに違いない、王太子殿下もセリアム公爵を無視できなくて当然と、侍女の中でもちきりでした。


 ですが、私は知っています。お嬢様に教えて頂きました。


 あろうことか、聖女様は国王陛下のエスコートを受けました。王妃殿下を差し置いてです。

 (ないがし)ろにされた王妃殿下の姿は、将来のお嬢様です。安心など、できる筈がありません。


「聖女様はお可愛らしかったわ。将来が楽しみね」


 お嬢様、こんな時まで微笑まれて。なんてお優しい。




 いいえ、聖女ごときにお嬢様の幸せを壊させはいたしません。

 微力ながら、全力でお支えいたします、お嬢様。


 







 聖女様お披露目パーティー、主人公は参加できませんでした。伯爵家以上全ての上位貴族が参加しましたので、使用人まで入りきれず、別室待機だったのです。


 名前だけ出てきたオスカー・ランドール、ボロクソに言われています(笑)


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 笑い事に出来ない位、オスカーさんやミリアちゃんに対する主人公の考えが偏ってて酷い。 この娘貴族じゃなかったの? 余りにも直情的過ぎん?大丈夫? 聖女様に対する集団虐め始まるの? 王太子婚…
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 確かにケチョンケチョンですが、伝聞だけだとそうなるよなぁ…いや、俺もそう思ってるんだけど、と他ならぬオスカー自身が思っていそう。
[一言] 後世の歴史家(藁)達もそんな風に評してたからな オスカー君のこと 公爵令嬢は舞台裏について知ってるのかな? 天津方舟について詳細を知っているなら聖女についても何も言うべきでないのは理解して…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ