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王太子殿下

 駆け足で書いてますが、長引きそうな。なんとか一月中に書き上げます。

 王宮の夜会会場。

 目の前に居らっしゃるのは、お仕えするセリアム公爵家のご令嬢とその婚約者の王太子殿下。そしてお二方に礼を()る貴婦人の皆様です。


 私は公爵家の侍女、お嬢様の付き添いです。殿下に対しご挨拶申し上げる資格はございません。

 王宮の使用人ではありませんので夜会の給仕は致しませんが、参加者ではなく使用人枠です。黙って壁際に控えるのが正解なのですが。


「久しぶりだね、アンジェリン嬢」


 なぜ私を名指しされるんでしょうか、王太子殿下。

 殿下にスルーされた元同僚達の視線の集中砲火を浴びました。何故あんたなんかがと言いたそうですが、私に言われても困ります。

 表情を取り繕うことをお勧めしますよ。周囲の目がありますので。


「殿下、少し休憩いたしましょう」

「そうだね、そうしようか」

 お嬢様が笑顔で誘われましたが、目が笑っていません。


 それはそうです。婚約者の前で他の女性(私のことですが)の名前を親し気に呼ぶなど、デリカシーに欠けます。なのに殿下はどこ吹く風。

 もう少しお嬢様に気を使っていただきたいところですが、殿下ですからねぇ。




 休憩のための個室へ移動しました。婚約者とは言え、年頃の男女を二人きりにするわけには行きません。当然私がお供することになります。これでもお嬢様の専属侍女ですから。

 殿下のお供は近衛騎士。これまた当然です。


 同じ近衛ですが、近衛騎士と近衛兵では雲泥の差です。


 近衛騎士は公爵家と侯爵家のご出身。王族の警護を任務としています。

 国王陛下の私兵で、国軍から完全に独立した陛下の側近。全員が王位継承権を持つエリート中のエリート。時には警護相手の代理を務める権限をお持ちです。


 お嬢様が将来王太子妃になられれば、この方たちが警護してくださるのですね。頼もしい限りです。


 とりとめのないことを考えている間に、お茶の用意が出来ました。

 王宮の侍女の方の所作は流れるように優雅です。参考にさせていただかなければ。

 テーブルに座るのはお嬢様と殿下のお二人。私と近衛騎士の方は壁際に控えたのですが。


「つれないな、アンジェリン嬢。私と君の仲じゃないか」


 お戯れが過ぎます、王太子殿下。お嬢様がお気を悪く……されてませんね。なぜそんなに良い笑顔なのでしょうか。


「よろしくてよ、アンジェ、直答を許します。言いたいことを(おっしゃ)いな」


 お嬢様のお許しが出ました。では、遠慮なく。


「殿下との仲と言われましても、貴族学園での同級生でございます。それ以上でも以下でもございません。周囲の誤解を招くようなお言葉は、全力で遠慮申し上げます。迷惑極まりないので、お控えいただければ幸いです」


 まだまだ言い足りませんが、これ以上はさすがに不敬でしょう。

 婚約なさって少しは落ち着かれたと思ったのに、相変わらずで心配になります。これが将来の国王だなんて、この国は大丈夫でしょうか。


「相変わらずだな、ワージー子爵令嬢は。領地経営の授業で私を抑えてトップの成績を叩き出した才媛だ。是非にと王城への出仕を依頼したのに素気無(すげな)く袖にされた恨み、忘れてはいないよ」


「領地経営の授業のみという条件でございました。他の授業では別の方が王太子殿下より好成績を(おさ)められたはず。私のみに拘るのは理不尽かと。まさか、女に後れをとることが許せないなどと子供じみたことをおっしゃる筈はありません。殿下の真意は、私ごときでは計りかねます」


 殿下が、降参とばかりに両手を挙げられました。


「うーん、君の将来性を買ってのことだったんだけれどね。正直、学園内で私に媚びてこない学生は貴重だった。その中で王城に招きたいと思うほど優秀だったのは君だけだったという話なんだよ」


 評価していただけたのは嬉しいですが、王族である殿下に中位貴族でしかない子爵令嬢が特別扱いされたらどうなるか、分かっていらしたのでしょうか。

 周囲から孤立し、王都に繰り出す仲の良い友人も作れず、ひたすら勉学に励むしかなかった学園生活。そうなった責任、知らないとは言わせませんよ。


「家の跡継ぎだからと、一度は手放したんだけれど、君、弟が産まれたそうじゃないか。これは天津神の采配だと思ったね。渋る君の両親を説き伏せて、弟の方に家督を譲るよう持って行ったのに、君ときたら平民との縁組を考えるなんて言い出しただろ。さすがに慌てたよ」


 なん、で、すって。

 両親が弟を跡継ぎにすることを渋っていた? そのまま私に婿を取るつもりだった?


「セリアム公爵家に預けて、新人侍女の間に婿を見つければ、そのまま君をワージー女子爵と認めることになっていたんだよ。未婚のまま二年が過ぎたら、将来の王太子妃の側近として取り立てるという条件でね。君の為人(ひととなり)を周囲に認めさせられたし、君の自由意思を尊重するという伯爵の申し出も達成できたし、良い賭けだったよ」






 寄り親の伯爵様。親身になって下さったと感謝申し上げていましたのに、そんな裏話があったなんて。どうして教えて頂けなかったのでしょうか。







 主人公、結構イイ性格しています。王宮の女官長辺りを務めてもやっていけるメンタリティ(笑)


 王太子殿下、これぐらい軽い性格でないと、本編でミリアちゃんにあんなふうに絡めませんよね。

 軽いですけど、一応筋は通す方。ある程度腹黒くなくては高位貴族のトップは張れないでしょうしねぇ。

 

 今日か明日中には、もう一話更新したいです。でないとマーク君やリアーチェ侯爵令嬢の話がいつまで経っても進みません(;^_^A



 お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。



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