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夜道を照らす影

 影が闇に踊っている。

 力強い意志を携え、夜道を駆けていく。


 冒険者ギルドから、もうひとつの影が現れた。

 夜道にまぎれている影に合流し、なにかを確認し合う。



「さあて、どうする?」



 ひとつの影が腕組みをした。テイザットだ。

 もうひとつの影はアレンで、声の軽いテイザットを睨みつける。



「まあ、睨まないでって。焦っても良い結果は出ないよ?」


「時間が惜しい」


「分かってるって」



 そう言ったテイザットが、懐から小さな金属片を取りだした。アレンの顔の前にかざし、「これがなにか分かる?」と尋ねる。しかしアレンはなにひとつ分からなかったので、首を横に振ってみせた。



「とにかく、ボクらは上手くやらないといけない。失敗すればシルフィちゃんは二度とボクらのところへ戻ってこれない。それだけは分かっておくんだ」


「……分かった」


「素直でいいね! シルフィちゃんも素直になってくれるといいけど!」



 金属片を再び懐に入れたテイザットが小さく笑う。

 アレンは苦い顔を見せてから、暗闇が落ちた道の先を覗いた。そこには人も、明かりもなかった。はるか先の方にひとつだけ、曇った赤い点が揺れている。



――ティファナ。



 赤い点を見据え、アレンは心の内で呻いた。

 不安が徐々に膨れ上がっていくからである。


 理不尽からティファナを助け出せるのか。

 目の前のそれも、これまでのそれも。これからのそれも。


 自分の手を見て、息を吐く。

 あの日掴んだティファナの手を、もう一度掴めるのかと問いかける。



「アレン?」



 顔をしかめるアレンに、テイザットが声をかけてきた。



「アレンひとりでやるわけじゃないんだよ?」


「……そうだな」


「ほうら、拳を出して」



 テイザットが拳を突きだしてくる。

 アレンは少し考えたあと、自らも拳を作り、テイザットの拳に突き合わせた。



「よおし、やったろうじゃん!」


「ああ。やってやろう」



 アレンは唇の端を強く結ぶ。

 道の先に見えた赤い点が、再び揺れた気がした。

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