第3話「はああ!!!??? な、何それ~~!!??」
観客席に座り、冒険者ギルド職員の大きな声を聴きながら、俺はふうと、
軽く息を吐いた。
ギルド職員のトークは更に続く。
「念の為、クランの新人冒険者の指名の順番は、依頼完遂件数と報奨金を鑑みて、ギルドの方で順位をつけさせて頂かせておりまあす!」
ここで別の職員がささっと駆け寄り、大きな封筒を渡す。
封筒の中には第一位指名される新人冒険者の名前が記された紙が入っている。
「さあ!さあ! プレゼンテッドバイ、リュミエール商会! 冒険者クラン新人選択希望会議! まずは! マエストロ、ローラン・ケーリオ様率いる、
誰もが知る冒険者ギルドナンバーワンクラン! グランシャリオ!
栄えあるグランシャリオの第1位指名は………」
補足しよう。
ギルド職員の言った通り、グランシャリオは誰もが知るナンバーワンクラン。
グランシャリオのクランリーダーたる「ローラン・ケーリオ」様は、
超有名人というかこの世界のレジェンドといって良い存在。
何せ20代後半で魔王を倒した元勇者で武闘派の賢者でもある。
勇者は引退したが、年齢はまだ35歳でバリバリの現役冒険者。
ローラン様の性格は冷静沈着でありながらも豪胆。
下手な学者をはるかにしのぐ、ありとあらゆる知識を持ち、
知らぬことはないと言われ……
剣聖レベルの剣技と素手でオーガをあっさりと倒す腕力を併せ持つ。
複数の属性魔法を行使する複数属性魔法使用者でもあり、
『マエストロ』というふたつ名を持つ最強のランクS冒険者なのだ。
当然、ローラン様率いる、グランシャリオのクランメンバー3人も全員がランクA、
一騎当千の猛者ばかり。
もしもマエストロたるローラン様に認められ指名され、
クラン・グランシャリオへ入隊出来たら、
最高の評価を得て、最高の人生を送るお墨付きを貰ったようなものだろうなあ。
しょせん貧乏騎士爵家の末っ子で最底辺の俺には縁のない話。
せいぜい3万人の観客のひとりとなって、うらやましさ満点で、
他人の人生の晴れがましい門出を、指をくわえて見送るしかないのだ。
まあ……グランシャリオは勿論、このドラフト会議において俺が指名されるわけなどない……
『最底辺』『能無し』『無駄飯食い』
『役立たず』『ゴミ』などなど、罵倒され荷物持ちさえ首になった俺は、
薬草の採集か、雑魚のスライムあたりをコツコツ倒し、
日銭を稼ぐしかないだろう。
そんな事を考えつつ、俺は買った新聞を見た。
新聞には何人もの有力新人冒険者の名前とスペックが記載され、
有名な各クランの指名予想が◎〇△などの印も含め記載されている。
オッズ(倍率)を公表する冒険者ギルド公認の賭け屋、
ブックメーカーが各クラン第一位指名予想の賭けを受け付けているのだ。
むうう……
グランシャリオに第1位指名されるのは……
即戦力で盾役を任せられるナンバーワン新人冒険者!
と前評判の最も高いあの戦士か、
ナンバーワンに勝るとも劣らない。
新人ながら攻防の魔法に優れていると絶賛されたあの魔法使いが、
指名されるに違いない……まあ、俺は賭けの投票券は購入してないけどな。
俺がそんな事を考えると、ショーアップされたイベントらしく、
だだだだだだだだだだだだ!!!!!
と、どらが大きく打ち鳴らされ、ばーん!とシンバルが打ち鳴らされた。
そして封筒を開け、名前を書いた紙を取り出し、ギルド職員が読み上げたのは、
何と! 何と! 何と! 何とお!
「エ、エ、エ、エルヴェ・アルノーおおお! じゅ、じゅ、16歳いいい! ラ、ランクFううう!」
大きく噛みながらも、
魔導マイクごしの、司会進行ギルド職員の声は闘技場に大きく響き渡った。
いきなり名前を呼ばれ、俺の頭の中は、ぱ~っと真っ白。
え、えええええ!!!???
ま、ま、ま、まさかああああ!!!
お、お、俺えええええ!!!???
な!!!???
何それええええ!!!???
へ!!!???
は!!!??
も、も、も、もしかして!!!???
ま、ま、ま、まさかあああ!!!???
お、俺エルヴェ・アルノーが、
王国ナンバーワンクラン、グランシャリオの栄えある第一位指名!!!????
こ、この俺がマエストロたるローラン様に認められ、
グランシャリオの第一位に指名されたあ!!!???
しいいいいいいいいいいいいいいいいんんんんんんんん…………
まさかまさかの予想外!!!
大番狂わせ!!!
超が付く大穴。
俺が第一位指名された事により、
ブックメーカーは『的中者なし』の発表をするやもしれない。
超が付く衝撃の出来事により、静寂に満ち、物音さえしない闘技場。
しいいいいいいいいいいいいいいいいんんんんんんんん…………
しいいいいいいいいいいいいいいいいんんんんんんんん…………
しいいいいいいいいいいいいいいいいんんんんんんんん…………
3万人の大観衆はショックのあまりひと言も発しない。
当人の俺も驚きのあまり酸欠の魚のように口をぱくぱくしていた。
とんでもない状況のせいか……数分間、広大な闘技場は静寂に包まれたままだった。
その静寂を破ったのは、聞き覚えがありすぎる声。
「はああ!!!??? な、な、何それ~~!!?? 私がポイ捨てした最悪の最底辺がマエストロに見込まれたグランシャリオの第一位指名なんて!!! 絶対にありえな~~いいい!!!」
俺をポイ捨て……否、リリースしたクラン『シーニュ』のリーダー、
銀髪女魔法使い、ミランダ・ベルグニウーの驚愕の波動に満ちた醜い金切声だったのである。
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