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第21話「戦いにおいて、俺は武道だけにこだわらない」

王都の郊外にあり、限られた関係者しか知らないという、

秘密めいた王国のヴィクトワール訓練場において……


『地獄の訓練』と新人冒険者達から怖れられている、

王国ナンバーワンクラン、グランシャリオの研修が、いよいよ始まった。


指導担当のクランメンバー、バスチアン・ガスパルさんは、

「初日は楽をさせてやるよ」とうそぶき、俺達へ、「訓練場の単独1周」を命じた。

あくまで『ただの散歩』なのだと強調して。


しかし、ここは王都騎士、王国軍が厳しい訓練に励む演習場。

森林、渓谷、川、沼、崖、砂漠などのバラエティーに富んだ地形に加え、

先ほど出現したオーク、ゴブリンなどの魔物、

また狼、熊などの肉食動物がうようよ居て、

餌となる人間へ、容赦なく襲いかかって来る過酷な環境だ。


クラン、グランシャリオからドラフト指名される前、

仮所属時代のクランにおいて、いわゆる『お客様扱い』されていた俺の同期ふたり、

ストロベリーブロンドの魔法使いシャルロット・ブランシュさん、

栗毛の戦士フェルナン・バシュレさんさんは、

バスチアンさんから提示された『救済策』を受け入れた。


その救済策とは、なんとなんと!

同期の俺が訓練場の単独1周……散歩に同行する事である。


俺もOKし……という事で、早速散歩へ赴く事となったのだが、

その前に、もうひとりの指導担当、

創世神教会元女性司祭のセレスティーヌ・エモニエさんからは、

貸与された魔道具ふたつの説明が為された。

実際に使用して試す形で。


まずひとつは魔導ベル。

手の中へすっぽり入る小ささだ。


使い方は簡単。

言われた通り、突起ボタンを押すと、

びいん、びいん、びいん、びいん、と大音量が鳴り響いた。


はっきり言って、耳障りで超うるさい。

しかし、絶対耳へは入る。

この訓練場のどこに居ても聞こえそうだ。


この魔導ベルは非常時に、味方へ救援を求める為のもの。

今回の研修では、少し離れた場所からついていくバスチアンさん、セレスさんが駆けつけるという趣旨だ。


同行する俺が戦い、同期を守る事は問題なしだという。


但し、指導担当へ救助を求めた場合、

その内容とにより、評価は下がってしまうと釘を刺された。


つまりバスチアンさん、セレスさんを呼んだり、助けて貰うのは最後の手段。


出来る限り新人同士で協力しあい、切り抜けろという事だ。


本当にやばい状況、

命を失うとか、大けがをしそうとか、

そういう場合は「ためらわず鳴らせ」とは言われたけどね。


まあ、指導担当が駆けつけるまで、タイムラグがあるから、

モタモタしていると手遅れになってしまう。

通報するタイミング、見極めも重要って事だな。


後で同期へは伝えるつもりだが……

もしも俺が守り切れないと判断した場合、容赦なく通報させて貰う。

やはり命あっての物種だからだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


さてさて!

貸与される魔道具のあとひとつは、魔法杖。


重い大気の塊を飛ばし、敵に当て、攻撃する魔法『風弾』を20発まで撃ち出せる。


貸与される魔法杖はあまり大きくなく、長さは小刀くらいで、太さも直径3㎝くらい。


革ベルトで吊り、腰だめに出来る。


結果、俺の左腰には剣、右腰にはこん棒と、魔法杖がぶら下がる事に。


少しかさばるが、がまんがまん。

命には代えられない。


剣、こん棒を武器とし、格闘技も織り交ぜて戦う俺にとっては、

遠距離攻撃が可能な飛び道具はとてもありがたい。


魔法杖の使い方も魔導ベルと同じく簡単。


杖の端、柄の部分を握り、

こん棒で『突き』を繰り出すように、的へ向け、心で「発射!」と念じるのだ。


世界の(ことわり)として……

たとえ魔法が使えなくとも、誰もが体内魔力は有している。


この魔法杖は、凡人の体内魔力でも起動スイッチに変換して、

魔法使いではなくとも、魔法を発動させる事が可能なのだ。


こちらも、魔導ベル同様、ロッジの隣のある射撃場で、練習。


新人全員、10発ほど試射で、風弾を撃たせて貰った。


やはり魔法使いたるシャルロットさんが一番様になっている。


狙った的へほぼ当てていたから、彼女は戦闘経験を積めばきちっと戦えるはず……と思う。


どっちにしても、後はメンタルの問題だな。


一方、フェルナンさんはといえば相当不器用。

放たれた風弾は、的へ全然当たっていなかった。

しまいには、イライラがつのって、ぶつぶつ言っているし。


そして、俺はといえば、正直、魔法を使うって楽しい。


戦いにおいて、俺は武道だけにこだわらない。

自身にダメージがなく、敵をスムーズに倒せれば方法は問わない。

そう、俺はすでに騎士ではなく、冒険者なのだから。


話を戻すと、肝心の試射だが、最初の5発は的へ当たらなかった。


しかし、気を取り直し、精神を集中。

じっくり狙って、6,7,8,と、どうにか的内へ命中。


更に9,10発は、的の『ど真ん中』へ風弾が吸い込まれ、

俺の戦闘レベルはまたも上がったのである。

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