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4☆時空転換器
「レン!ほんとうに行くの?」
レダが心配してきいた。
「もちろん。行って帰ってくるよ。ちゃんと行った証拠を持ってね」
俺はウインクした。
研究所の秘密裏の部屋に入れるのはごく一部の者だけだった。俺はそこの実験機のテスト駆動をする係で、自分の仕事に誇りを持っていた。
レダとは将来を約束した仲で、彼女のお腹の中には俺の子が宿っていた。
「きっとちぢゅちぢゅのちぢれた赤毛の子が生まれるよ」
俺が笑って言うと、レダはふくれっつらで俺の背中をバンバン叩いた。
「どうせ私は赤毛ですよ!でも、縮毛じゃないわ」
「知らないのか?俺の母方の婆さん、縮毛だったんだぞ」
「うそお!」
嘘。ただレダをからかいたかっただけだ。
俺は時空転換器の最終チェックをしていた。
「ち。またか」
「何?」
「誰かがいじった形跡があるんだ」
「そんな。誰がやったのか突き止めないと危険だわ」
「お互い疑ってチームワークが乱れて実験が中止になるのか?」
「でも」
「大丈夫。俺はそのへんぬかりはないから」
でも。
たしかに総点検したはずの時空転換器は時空異常を巻き起こした。