3☆夢
俺はもう一人の俺の前に立っていた。
あの時、俺は二人もいらない!と俺を撃ってしまったけれど、今落ち着いて考えてみれば、俺が二人も同時に存在する、その異常状態の理由が知りたくてしょうがなかった。
それに、俺は誰だ?
どこから来てどこへいく?
ジプシーのように明日のことは考えずその日歌って暮らす流れ者でいいのか?
俺はジプシーのキャラバンにいればいるほど、自分とは異質な感じがしてくるのだった。
ばあんん!
ゆっくりと弾が弾き飛ばされて、そして、俺の胸に当たる。今度は撃つ方じゃなくて撃たれる側だ。
スローモーションで世界が動く。
俺は、死ぬのか?
いやだ。生きてやる、生き延びて全ての疑問を解いて、それから……。
☆
「イオ、起きて」
えっ?
「フォスティーヌ?」
「うなされていたわ。どうしたの?」
辺りは夕暮れに差しかかる時分だった。
「寝落ちしてしまったらしい。すまない」
キラキラ。
フォスティーヌの金の髪に夕日の光が優しく注ぐ。
俺はフォスティーヌの手を取り、言った。
「俺と二人で生きていかないか?」
「……無理よ。私はジプシーだから。生まれてから死ぬまでキャラバンにいるの。それが私の幸せ」
「そうか」
俺は落胆した。
「さあ、夜の宴の始まりよ!行きましょう」
俺は重い腰を上げた。