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プロローグ
俺は白いモヤの中にいた。
いつからここにいるのか記憶が曖昧だけど服が湿っていて、ぶるっと身震いした。
「……」
話し声だ。だんだんこっちに近づいてくる。
腰のホルスターから銃を抜いて構える。
「おっと!撃つのはちょっと待ってくれよ」
聞き慣れた声。というより、俺の声?
「よう!過去の俺よ、今どうしようか迷ってるだろ?」
そいつは馴れ馴れしく言った。
「ここは『特異点』だ。時空が交差するところ。お前はこれから数々の試練を受けて最終的に『俺』になる。俺はループを断ち切りに来た。何度この場所と時間に来てもお前は俺を撃って先に進む。だから、俺は何とかして状況を変えたいんだ」
「何度も?」
「そう。何度も」
未来の俺はわけ知り顔でうなづいた。
ざわざわ。
大勢の人の気配。俺は臆病風に吹かれる。
「俺は2人もいらない」
そう言って未来の俺を撃った。
くずおれる未来の俺。
過去も未来も、今を起点に流れている。いずれ俺は過去の俺から撃たれる運命なのか?
「銃声がしたぞ!」
声が追いかけてくる。俺は盲滅法逃げ出した。