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リモートで街へ行ってみた

巨人討伐を終え3名は馬車に揺られ組合があるという街ツバィトへ向かっている。

フィーラとクノンは疲れはてたのか寝息をたてて寝ている。

明らかに普段戦わない巨大な相手との戦闘だったのだ。

疲れるに決まっている。

そんな寝顔を息を荒くしながら見つめているヤエがいる。

男だったら通報される面構えをしている。


「いや~可愛い女子の寝顔は最高だね~ゲヘヘ」

「一刻も速くお前を元の世界に帰さないとヤバいな」

「うう…!確かに両親に心配をかけているしね!でもこの世界には

 まだ見ぬ美少女美女がいるやもしれない…うぬぬ…」


そんな時、突如背後からドンっと大きな音がする。


「海!いつまで部屋にこもっているつもりだい!」

「母さん!」

突如俺の部屋の扉を勢いよくこじ開け母が乱入する。

ノックくらいしてくれぇ!思春期男子が障害のトラウマと相対するよく見るシチュ!

というか映像!ヤエめっちゃ映っている!


「渚おばさん?」

「んん…!?あんた…ヤエちゃん!」

俺の映像越しに映る母の姿を見てヤエが思わず声を出す。

映像のヤエの姿もしっかりと母に見られた。


-------------------------------------------------------------

まあ、見つかったので母に説明をする。

休日ということもあり父も招集し、リビングで緊急家族会議が開かれた。


「つまりヤエちゃんは別世界にいて、お前がそれを遠隔で支援していると」

「ざっくり言うとそうなります…。父さん。隠しててすみませんでした…。」

「奇跡体験アン○リバボーか!ム○か!簡単に信じられるかぁ!」

デスヨネー。


「まあまあお父さん。私も始めて見た時はびっくりしましたもの。

 海も私達を混乱させないために隠してたのよね?」

「うん。あまりにも唐突な出来事だったから」

「まあ、水上さん達に突然報告しても混乱するだけだからな」


家族で話し合い、ヤエの両親に話すことにした。

それからの展開はあっさりしたものでヤエの両親は困惑しながらも

状況を信じてくれた。映像と音声のみとはいえ娘と話し合えたのが大きかったのだろう。


勿論この異世界が通常よりも危険であることは話している。

ヤエの安全は保証されない分頑張らないと。


-------------------------------------------------------------

「いや~案外あっさりいくものだね~。

 トラブルとはいえお父さん、お母さんにも理解してもらえたし良かった」

「一つの問題は解決はしたのか?」


あっさりと物事が上手く行き過ぎて良いのかと疑問に思うが

割と人生こんなものか?釈然としないがまあいいか。


クノンとフィーラは寝ている状況だが、馬車を動かしている

おじさんは背面で開催されていた家族会議をずっと聞いてたことになる。

事情を聞いてくれないあたり配慮がありがたい。


「んん…。よく寝た…」

「おはようクノンちゃん。ヨダレたれてるよ。拭いてあげる」

「んん…。大丈夫。ヤエの事だから私に触りたい目的でしょ?」

「なんでバレたの!ヨダレを拭いてあげてそれをチュパ…いやなんでもないよ」


クノンがすぐさまヨダレを拭き取り、ヤエを汚物を見るような目で見る。

うん…。ヤエ今とんでもないこと言おうとしたよな。チュパって…。言及しないでおこう。


日はすっかり傾いている。

「嬢ちゃん達。見えてきたよ」

おじさんが街を指差す。。

目の前には石材で作られた立派な防御壁が見えた。


「は~大きな城壁だね~」

「正確には防御壁。この街に城は無い」

「は~なるほど~」


馬車が門の前までたどり着く。

「それじゃ嬢ちゃん達。俺はここまでだ」

「お世話になりました」

「ん…ありがと」


おじさんにお礼を言い街へ入ろうとしたがフィーラの姿が見えない。

寝たままのフィーラを起こすのを忘れており、馬車を追いかける事になった。


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「うう…。お恥ずかしい。眠ったままなんて情けない姿を…」

フィーラの顔が真っ赤である。

「ん…。こちらこそフィーをおこすの忘れててごめん」

「ごめんねフィーラちゃん」


ヤエが小声で語りかける

「ねぇねぇ海くん」

「どうした?」

「羞恥で赤面している女子って最高だと思わない?」

「真剣に耳を傾けた俺が馬鹿だったよ…」

とはいえ赤面女子は確かに最高だが…。口には出さないぞ。


「さて気を取り直して!ようこそヤエさん海さん。

 こちらが組合の支部がある街"ツバィト"になります」


門をくぐり、正面に見えるはRPGでよく見る中世風の景観だった。

日も傾き、夕刻時だが人通りは多い。露天が立ち並び、酒をあおるもの

夕飯の食材を吟味する主婦。

走りまわる子ども。

ひと目で活気ずいている事が分かる。


「おお~!凄い凄い!ほんとにゲームの世界が目の前に広がってる!」

ヤエが目を輝かせてる。確かに目の前に等身大のファンタジー世界が広がっていると

テンションが上がるもんな。俺だってワクワクしている。


「ふふ…。ヤエさんに気に入っていただいて何よりです。

 こちらは門の出入り口近くともあり、商品の往来が多く、

 行商のやり取りが盛んな玄関口なんです。

 観光案内したいですが、夜も近くなっているので組合の報告に向かいましょう」

「うう…。買い食いとかしたい…」

お腹をさすりながら、露天で焼かれるマンガに出てくるような肉を凝視している。


「ヤエ…。組合も営業時間があるから早くいかないと。ほら…」

そう言いクノンがヤエの手を繋ぐ。

「!!!?手ぇ…。手ぇ…。小さめ…。ふぅふぅ」

ヤエがクノンの手をつないだ状態にご満悦な表情を見せる。

いや…どちらかというと犯罪者の顔だコレ。


フィーラの案内で街の組合がある場所へあるき出す。

途中、ヤエが興奮を抑えられなくなったのか

「もう我慢ならん!」

と言いクノンに背後から抱きつこうとし、思いきり背負投をされた。

「ひでぶっ!!」と世紀末救世主に経絡秘孔を突かれたような声を出し、

地面に叩きつけられた。キレイな受け身だった。


-------------------------------------------------------------

組合への道を歩きながらフィーラに質問をする。


「フィーラ。聞いていなかったがそもそも大陸統括組合は具体的にどんな組織なんだ?」

「大陸統括組合というのは簡潔に言えば住民の支援機関の一つです。

 住民への生活支援。補助。保護。モンスターの討伐から周辺の警備。

 住民支援を主軸とした規模の大きななんでも屋という感じですね」

 

俺達のいる世界の自治組織みたいなものか。

 

「支部と言っていたが各地域間に分かれているのか?」

「別れていますね。王都に本部あって、各地域に支部がある感じです。

 住民の声を拾うのはやはり現地に限りますからね。支部は直接要望を

 聞き入れるための窓口です」

「地域によって困りごとも相談も変わるからか」

「そういうことになります。なので支部ごとに経営は任されています。

 私達が向かっているのは"ツバィト"支部になります。

 クーちゃんも私も所属しているのがこの支部になります」


ふと巨人討伐時に気になっていたことを質問する。


「そういえばクノンとフィーラは知り合いなのか?」

「そうです。私が組合に入りたての頃にクーちゃんがいて色々と教えてもらいました」

「フィーに色々教えた…。街の迷子を助けるつもりが一緒に迷子になったから

 地図の見方を教えたり、術式の勉強するって言って間違って普通の小説借りて

 内容最後まで読んで感動して泣いちゃったりしたんで術式本を借りれる場所教えたり…」

「なんで今そのことを暴露するのぉ!」


顔を伏せて赤面するフィーラ。どことなく抜けているよなこの娘。

後ろをとぼとぼ歩くヤエがクノンに語りかける。


「うう…。クノンちゃん。何卒…何卒また手を繋いでいただけないでしょうか…

 私も迷子にならないために」

「ヤエは勝手に抱きつくからヤダ…。モンスターより危険…」

「ええと…。ヤエさん私でよければどうぞ」

「フィーラちゃんの優しさぁ…」


今度こそ反省したのか大人しくフィーラの手を繋いで歩いていた。

途中、体がぴくんぴくんっと本能的に襲う挙動をしていたが。不安だ。


-------------------------------------------------------------

数分ほど歩き、組合の看板が掲げられた場所につく。

"大陸統括組合ツバィト支部" 間違いなくここだ。


「到着しました。こちらが組合になります。早速中に入りましょう」

フィーラが組合の扉に近づく瞬間。

突如、何処からともなく声が聞こえてきた。


「フィーーーーーーラーーー!!戻って来たかーーーー!!」


その声の主が組合の2階から飛び降りてくる。

キレイに着地を決め、一目散にフィーラに駆け寄り抱きつく。


「お…お師様!今は東イルスラ領にいたのでは?」

「お~よしよしよしよし。可愛い可愛い弟子に会いたくて戻って来たのさ!」

「なおのことそんな理由で仕事を放棄しないで下さい!怒りますよ」

「むう~しっかりと仕事は終わらせてきたさ。相変わらず冗談が通じない弟子だ。

 あ!でも可愛いというのは本当だぞ☆」


疾風迅雷の如く現れ、抱きつき頭をなでなでし、離れる。

フィーラの師匠か。年は20代後半くらい。黙っていれば美人さんなのだが

今の一連のやり取りとニヤニヤ顔を見たら残念美人さんに一気に昇格した。

うん。ヤエと同種の匂いがする。


「フィーラちゃん。この人は?」

「ええと…。恥ずかしながら私の術式の師匠です」

「よくぞ聞いてくれた!フィーラのお師にして推しの術者ツクヨさ!

 弟子がお世話になっている。君は?」

「ヤエです。ちょっとした事情で今、フィーラちゃんに同行しています」

「ふむ。ヤエか。君も可愛いな!抱きしめていいかい?」

「勿論です!こんな美人さんと触れ合えるなら本望!」


ぱっと両腕を広げ受け入れ体制になるヤエ

「おお!同士よ!」

っとすかさず抱きつくツクヨさん。

その光景を道端の雑草を見るような目で見るクノン。

ツクヨさんはそれを見逃さない。


「んん~?そのゾクゾクするような視線。クノンも久々だな。

 フィーラとヤエだけふれあいして不公平だな。どれ近うよれ」

「私もクノンちゃん近寄りたいね~」


ツクヨとヤエの抱きつきが終わり、クノンにターゲットを変更する。

ジリジリと2人に追い込まれるクノン。「やめ…やめて…」と小声で言う

流石に可愛そうになり声をかける。


「クノンが可愛そうなので、そろそろ止めた方が。

 本人も本気で嫌がってそうですし」

「ああん!!誰だ貴様!」


ツクヨさんが俺の顔を見た瞬間睨みつける。

百合の間に挟まる男を滅殺するような目だ!怖い!

遠隔で殺される!


「なるほど投影術式か。そうやって遠隔で美少女達をガン見しよって。

 うらやまけしからん!ん?待て!その手があったか!」

何か思いついたのか考え始めるツクヨさん。


「遠隔で美女の湯浴みを覗ける術式か…。研究しがいがあるな。

 よし!とりあえず立ち話もなんだ。中に入って事情を聞かせてくれ」


そう言って、組合の建物に入るツクヨさん。

ツクヨさん今さらっとヤバいこと言ってたよな?

クノンは標的を外されホッとした表情をし、ヤエは流れが変わり残念そうにし、

フィーラは師匠の暴走を見て情けなさから恥ずかしそうにしていた。

うん…皆真剣に聞いて無かったみたいだし忘れよう。


-------------------------------------------------------------

組合の待合スペースで俺たちの事情をツクヨさんに話した。

フィーラとクノンは受付に本日の出来事の報告をしている。


「なるほどね~。ヤエと海の事情は大体分かったよ。

 しかし転移にゴブリンに襲われ、次に傀儡に襲われる。数日間で劇的な展開だ」

「いや~決死でした~」


笑いごとじゃないんだけどな。


「あの…話は変わりますが、ツクヨさんはフィーラの師匠なんですよね。

 術式に関しても詳しいと思うのですが、異世界を往来する術式について何か知りませんか?」

「う~ん。海とヤエには悪いがそんな術式は聞いた事が無いな。

 海みたいな投影術式のように別世界の映像や音声のやり取りをしているだけで珍しいのに

 人間の転移となるとさっぱり分からん」

「そう…ですか…」

ヤエがシュンとする。


「おいおい。そんながっかりした顔をするなヤエ女子。あくまで事例が無いだけさ。

 現に海とはこうして会話が出来ているんだ。互いの世界は干渉しあっている証拠だ。

 ヤエがこちらに来た方法が存在するなら帰る方法もあるさ。

 それに移動に関する術式の研究もされていないわけではないしな」

「それは本当なんですか!何処まで研究が進んでいるんですか?」

「まあ待て青年よ。あくまで研究の段階だ。術式が確立されたわけでは無い。

 そうだな。実際に見せた方が早いかもな」


そう言いツクヨさんが机の上に小さな木材を置く。


「術式はいくつかの術を重ねてかけて構築するものさ。

 転移に関してはこうやって行う」


ツクヨさんが術式を発動したのか木材が徐々に消えていき、

数センチ離れた場所に徐々に出現し始める。

ただその木材には違和感があった。

大きさも形も色合いも先程の木材とは微妙に違う。


「はい、転移終わり。どうさね。微妙に先程の木材とは違って見えるだろ?」

「確かに違いますね。どうして?」

「理由は勿論ある。木材を導素に分解。導素のパーツになった木材を数センチ先に移動。

 移動後に導素を木材に再変換、パーツを再構築。ただその過程で構築中に不純物が

 混ざったりして色合いも変わる。あとは木材を細かな導素に変えてまた再構築するんだ。

 必然的に形も総量も変わる。割れた陶器を完璧に修繕するように不可能に近いのさ」


確かにこれは難しそうだ。


「これって生物なんかに使用することも出来ないのですよね?」

「その問題もある。あくまで転移は分解だ。体を一度分解した段階で生命活動が停止する。

 現状だとこの転移術式は無生物以外に使用は出来ない。

 生物に無理やり実施するにしても、その生命体の持つ導素はそれぞれ異なる。

 時間をかけて一つの生命体の理解、分解、再構築する必要があるのさ」

「おお!錬金術の基本」

ヤエが食いつく。


「錬金術とは馴染みの無い言葉だね。ヤエの世界の術者かい?」

「そうです。既に何百年と前に廃れましたけど不老不死、黄金の生成とロマンある研究が

 されてたもので…」


ヤエとツクヨさんが錬金術トークに話をさかせる。

転移の術式について考える。

一般的な技術だと転移は不可能。ましてやヤエのように別世界の転移となると更に難易度が上がるだろう。

となると誰かが転移についての術式を秘匿にしているのか?

もしくは術式とは異なる超自然現象?

憶測と妄想の域から脱せない。もっとこの世界についてしる必要があるな。


「ふぅ~疲れました。報告は相変わらず慣れませんね」

「ん…。でも注意だけで済んで良かった」


クノンとフィーラが戻ってきた。


「あ!おかえりフィーラちゃん、クノンちゃん」

「お疲れさね。その様子だとそこまで怒られなかったかな」

「そうですね。ヤエさん達は何か成果がありましたか?」

「全然だめだね~。ツクヨさんでも転移については分からないってさ」

「そうですか。お師様でも分からないとなるとどうすればいいのか…」


手詰まりか。悩んでいるとツクヨさんが発言をする。


「うむ。そうだな。だったら魔族や亜人族に話を聞くのが手っ取り早いか」

「魔族?亜人属?なんとも甘美な言葉!この世界に人間族以外もいるの?」

「おお~いい食いつきっぷりだな。いるさいるさ。この街には少ないが各領地や別大陸には

 魔族や亜人族がいる。まあ、向こうからしたら私達が人間が異人だがな」

「その魔族や亜人族は術式に詳しいんですか?」

「いんや。種族によって異なる。全く使えない種族も得意とする種族も様々さ」


そしてツクヨさんが地図を取り出し、机に広げる。


「今、私達がいるのはセラルト大陸の南テンベル領ツバィト。

 この大陸の北にある大陸。イシル大陸に術式を得意とする亜人族エルフの民がいる」

「エルフきたーーー!」


ヤエが思わず立ち上がり歓喜の声をあげる。

まあ、テンション上がるよね。俺だって上がる。


「うお!どうした、ヤエ?エルフはあんた達の世界にいるのか?」

「ああ…いえ。いないのですが架空の小説などのはあるので」

「なんだが不思議な世界だね。ヤエの世界で架空でもこちらの世界では存在する。

 この民は他の民族に導素知識と術式を伝授した根源の民と言われる。

 基本的に外交はあまりしないからこの大陸ではあまりみかけないけどな」

「確かに私もクーちゃんも出会ったことが無いですね」

「現状、私達が転移について知らないなら別の種族に話を聞くのが良いさ。

 外交はしないと言ったが拒絶する種族でもない。行けば話くらいなら聞いてくれる」


ツクヨさんの提示してくれた案はありがたい。

この世界について知らないことだらけなので指針が決まらないというのもあるが。


「ツクヨさん。ありがとうございます。でもこの大陸まで僕たちだけで行けるのでしょうか?」

「流石にヤエ達だけで行くのは難しいさ。何より問題が一つある」

「問題?」

「このセラルト大陸以外の大陸は基本的に亜人族が住まう土地だ。

 当然、道中危険も伴うから大陸の移動は民間人に了承が出ない。

 移住や外交、定期的な商いとか以外は移動は不可さ」

「じゃあどうすれば…」

「そう落ち込むなさんな。もう一つの方法がある。危険が伴うなら自衛する力があればいいのさ。

 B等級以上の組合員なら他所の大陸の渡航も許可される」

 

そういえばフィーラも巨人討伐報告時に等級を報告してたな。気になる。

察したのかフィーラが説明を始めた。


「えっと…。等級というのはですね、いわゆるその組合員がどれだけの技量があるのかの

 指標みたいなものです。組合には様々な依頼が毎日きます。内容は様々で難しいものから

 簡単な依頼まで。その依頼が自分の能力で受けられるかの判断の為や

 討伐するモンスターはどの等級なら倒せるのかの判断、今回のような渡航等の移動に関しても

 様々な技量を可視化するために等級があるんです」

 

技量を明確化するための指標か。術式傀儡と戦って規定違反になったのはフィーラもクノンも

D等級とC等級で技量に見合ってなかったというこなのか。


「でもフィーラちゃん。私みたいなこの世界で住所不定無職が組合員になれるの?」

「基本的に外部の人間がなれることは無いですね。

 2名の組合員の紹介状があれば仮所属までならできます。

 あとは組合のお仕事を積み重ねれば正規組合人になれますよ」

「そういうことさ。フィーラの言うようにまずは正規隊員になる。

 そのあとB等級まで目指す。その頃にはある程度この世界についても学べるはずさ」


ツクヨさんは俺たちがこの世界に疎いのが分かって、この案をだしてくれたのだろう。

働きながら路銀を稼ぎ、力をつけ、この世界の知識を身につける。

無理に大陸を移動するより安定性の高い案だ。


「ツクヨさんありがと!私の目指すべき目標が見えた!」

「そりゃ良かった。紹介状は私とフィーラが出すよ。

 フィーラ。師匠としての依頼を出す。ヤエとチームを組んでB等級を一緒に目指せ」

「承知しましたお師様。もとよりそのつもりでしたので」

「さすが我が弟子!その献身性良いぞ!よし来い!ナデナデしてやる」

「怒りますよ」

「ひん!」


ツクヨさん、油断すると直ぐに残念お姉さんが出るな。


「ん…。私もついていっていい?」

「クーちゃんも?でも私みたいなフリーな組合員と違って警備隊に所属してるでしょ?」

「うう…。でも2人だけだと心配。一度ジギに話してみる」

「そうした方が良いね。警備隊のお仕事途中でほっぽり出しちゃ駄目だよ」

「…うん。でも許可が出たら一緒にチームを組んでいい?」

「いいよ。クーちゃんと私の仲だもの。一緒にヤエさんの手助けをしよう」

「うう…。2人の優しさが嬉しいよ…。こんな出会ってまもない私のために…。

 クノンちゃんよしよししていい?」

「それはヤダ…」


ヤエよ。自重しろ。


「どうやら話はまとまったようさね。

 目指すはイシル大陸。これから3人にはB等級を目指してもらう。

 私は力になれないが頑張ってくれ」

「はい」「ん…」「承知しました」


3人が力強く頷く。友達が今、仲間になる瞬間だ。


-------------------------------------------------------------

ツクヨさん、フィーラに組合加入の為の紹介状を書いてもらう。

組合受付に提出し、所属のための書類をヤエが記載始めたが

文字や言葉を術式で理解出来ても文字の書き方までは術式でどうこう出来なかった。

フィーラに教えてもらいつつヤエは懸命に書類に必要事項を記載していた。


いつの間にか、ツクヨさんの姿が見当たらない。

地図で探すと組合の建物から出ていたのを見つけた。

アイコンを選択し、話しかける。


「あの。ツクヨさん。ヤエに親切にしてくださりありがとうございます」

「お!ひっそりと出たつもりなのに青年に見つかったか。

 中々優秀な術式じゃないか」

「あのツクヨさん。何故ヤエにここまでしてくださるんです?」

「そうさね。組合の言葉に基づいてヤエに道を示しただけさ。

 組合員の人手が増えるのは嬉しいしね。まあ、しいて言うなら…」

「言うなら?」

「美少女が困っているんだ!そして私と同じような志を持つ同士!

 助けない理由がないだろう!」

 

ああ、忘れてた。この人残念美人だった。

俺はお礼を一言伝え、ツクヨさんは鼻歌まじりで夜の街へと消えていった。

読んでいただきありがとうございます。

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