リモートで救援してみた
映像の先には二人の怪我人。
後方に人一倍大きな茶色い巨人。
ひと目見て現状がわかる。襲われている!
一人は10代後半~20代くらいの女性だ。節々に擦り傷が見られる。
一人は初老くらいの男性だ。頭から血を流し、女性の肩を借りている。
足を引きずっているのを見るに走って逃げることが出来ないのだろう。
「大丈夫か!」
怪我人二人に声をかける。
突然の声に女性が驚きで顔を上げ、俺と目が合う。
「え…術式?君は一体どこから…」
「話は後だ!襲われているんだな!」
「ええ!馬車で道を通っていたら突然あの巨人に襲われて…」
後方に見える巨人を確認する。5m~6mくらいの赤い一つ目をした茶色い体の巨人だ。
創作物で例えるならゴーレムに近いような見た目だ。
その手には馬が握られていた。おそらく馬車を引いていた馬だろう。
次の瞬間、手に握られていた馬を大きく振り上げ地面に叩きつける。
悲惨な光景が平がる。
馬が動かなくなるのを確認したあと、赤い目がこちらをこちらを向く。
攻撃対象が切り替わったのだろう。大きな巨体をこちらに向け
こちらに進行してくる。マズイ。
「クリシェ!わしのことは良いから逃げろ」
「駄目よ!父さん!このままだとあの巨人に殺される!」
状況は最悪だ。馬の惨状を見るにあの巨人は生物に対して容赦がない。
確実に殺戮が目的だ。馬が死んだことによって標的が切り替わった。
おそらく何かしらの方法で生物を確認して標的にしているのだろう。
動きに迷いがない。こちらの親子は怪我を負っている。
ヤエ達に助けを求めても間に合うか?
駄目だ!逆にヤエ達が危険に巻き込まれる!
思考を巡らせているうちに巨人が親子に徐々に迫る。
ええい!物は試しだ!
俺は出力先を巨人の背後にして映像を出現させた。
「おい!巨人よ、こっちだ!」
巨人の優先順位は不明だが、注意を引きつけられないか試した。
巨人がこちらを向き、標的を変えたのかこちらに向かってくる。
相手の間合いに入らないように地図を確認しながら適度な距離をとる。
上手くいった。俺は投影術式で映像が写っているだけだ。怪我の心配もない。
このまま適度な距離をとって相手を誘導していこう。
怪我人の二人は意図を察したのかそのまま巨人から距離をとるように移動を再開した。
「ほーら。こっちだぞ~のろま~」
頼む。そのまま俺を注目していてくれ。
しかし、祈りは虚しく、巨人は突然大きな拳を振り下ろし地面を叩きつけた。
大きな轟音と共に辺りの地面がひび割れる。
追いつけないと判断したのかコイツ!
巨人は映像の俺が無傷なのを見ると今度は近場にあった岩を持ち上げ投げつける。
「うお!」
映像越しとはいえこちらに向かって巨大な岩を投擲されたのだ。思わず声が出る。
巨人は攻撃が通らない事。俺が反撃してこない事を認識したのか、
再度、親子の方向へと転換した。
くそ!このままだと二人が危ない。
一瞬迷ったが、手段を選んではいられない。
無力である反省は後でしろ!
地図をヤエ達のいる区域にずらし、声を出す。
「3時方向!人が襲われている!怪我人で走れない!」
たったその一言。事情を聞くまでもなく、ヤエは一目散に指示した方向へ走り出す。
フィーラは突然の出来事で一瞬戸惑ったがヤエの後を追うように走り出す。
「海さん!一体何があったんです?」
「ああ。馬車のいるアイコンを確認したら、運転手だろう二人組が巨人に襲われていた。
馬車は崩壊。怪我を負っていて走れないみたいだ」
「それは大変です!早く向かわないと」
地図のアイコンを確認する。
親子と巨人のアイコンは徐々に詰められている。
確信はないが、巨人は追いつけないと認識すると
先程のように物を投擲する遠距離の攻撃をするはずだ。
親子は現状走れない。巨人に追いつくのは時間の問題だが幸い遠距離での攻撃は無いはずだ。
だが間に合うか。ヤエとフィーラのアイコンを確認する。
アイコンの移動速度からフィーラの速度だと間に合わないが、
ヤエのアイコンの動きが異常に早い。
こんなにヤエは走るのが早かったか?
疑問が湧くがこの早さならギリギリ間に合うかもしれない!
「見つけた!」
ヤエの声が聞こえる。巨人と親子が目視で確認できる距離にまで近づいていた。
同時に巨人は親子を攻撃できる距離まで近づいていた。
「間に合えぁぁぁ!!」
ヤエが声を上げ一気に距離を詰める。
巨人は大きく拳を振り上げ親子に向かいその拳を振り下ろした。
その瞬間ヤエが親子をタックルするような形で両手で体を抱きかかえ
巨人の攻撃を間一髪回避することに成功した。
ヤエはそのまま二人を担ぎ上げた状態で走り出す。
そんな力が一体何処に?思えばゴブリンに追われたあの初日。
アロエを抱え、速度を出していた。それに一晩中森を走り回れた持久力。
もし、現実世界と異世界の身体的負荷が全く異なっていたら?
重力の違いで身体能力が異なる世界で飛躍的に伸びる現象。
ドラえもんでのび太くんは別の惑星で超人的な力を得て、悪を成敗したように。
これが今、ヤエにも適用されているのなら、
身体能力の高さにもこじつけ的とはいえ理屈が通る!
屁理屈でも良い。今、この状況を突破出来るのなら。
「ヤエ!大丈夫か!」
「大丈夫!怪我もなし。お二人さんも大丈夫?」
「ええ…。ありがとうございます」
「巨人は一定距離を取ると投擲をしてくる。近場の岩や木なんか
投げられるものを投げて来るぞ!」
「OK!でも流石に後ろを見ながら走るのは難しいかも」
「俺が背後を見ておく。指示が来たら左右に避けてくれ」
俺はヤエの背後にいる巨人を注視する。
巨人が先程のように投擲するならその直前にヤエに指示を出せば良い。
物が投げ出されればコントロールは効かない。
ある程度の距離だ。その瞬間であれば避ける事が出来るはずだ。
話しているうちに巨人との距離が離れていく。
追いつけないと分かったのか、巨人は近くの木を根こそぎ取り
それをヤエに向かって投げつける。
「今だ!避けろ!」
俺の指示と同時にヤエが右方向に避ける。
そのまま大木はヤエに当たらず大きな音を立て地面に落ちる。
「あっぶな~!ナイス海君!」
次々に巨人は近くにある岩や木を投げつけてきた。
俺はヤエに指示をだし、ヤエは左右に避けつつ全力で
巨人から距離を離していった。
目視で確認出来ない距離まで離れると巨人の投擲攻撃も止んだ。
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「よし!ここまで来ればひとまず安全かな」
ヤエが抱えていた二人を下ろす。
地図上にいる巨人のアイコンは一定速度でこちらに向かってくる。
しばらくは問題ない距離であるが油断は出来ない。
「ぜぇ…ぜぇ…。皆さ~ん。無事ですか~」
丁度、フィーラが息を切らしながらヤエ達と合流した。
「ハァハァ…。こんなことなら普段から…体力を鍛えて……おくべきでした…」
「まあ、ある意味巻き込まれずに済んで良かったが」
逆にフィーラが早かったら巨人の投擲攻撃に巻き込まれていたかもしれない。
ヤエの速度だからこそあの攻撃を避けられたのだ。
「フィーちゃん。お疲れ様。来て早々お願いなんだけどおじさんとお姉さんが
怪我をしてるんだ。治療とかの術式とかない?」
「治療術式ですか。存在はしますが、今はとりあえず応急処置をいたしますね」
フィーラは杖を取り出し男性の頭の出血を水で流し、持っていた包帯で巻きつける。
足の怪我に関しては術式で力を与えたのか、男性の顔から痛みが引いていた。
お姉さんの方にも簡単な応急処置を施した。
「応急処置は完了です。後でお医者様に診断してもらいましょう」
「ゲームみたく一発で治ったりしないんだね」
「ゲームとは何か不明ですが、術式は万能では無いので。
治癒に関してはこの場を乗り切ったら説明します。
海さん、ヤエさん現状は?」
俺は簡潔に状況をフィーラに伝えた。
依然として巨人はヤエ達に近づいている。
そろそろ射程距離に入る。草原であるため見晴らしも良く、
隠れる場所も見当たらない。
一先ず移動を開始した。
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移動しながら親子の情報を整理する。
男性の名はオリス。女性の名前はクリシェ。
普段は馬車でいくつかの街や村を往来し、商品の仕入れと売買を
行っている商人とのことだった。
普段と同じ道を通っていたところ突然、大きな岩が投擲され馬車が崩壊。
直撃は免れたものの勢いよく飛ばされ怪我を負ったとのことだ。
近づいてきた巨人にとどめをさされる直前に俺が見つけた場面へと繋がる。
「申し訳ない。わしが怪我をしなければ」
「父さん。今は逃げることを考えよう。」
「そうそう。最悪私が二人を担いで逃げるから!
………。フィーちゃんがいるから無理だ!」
「えっと…。遅くてスミマセン…」
ヤエよ。それは場の緊張感を和らげようとしているのか?それとも天然なのか?
おそらく後者だろう。
地図上のアイコンを確認する。
まだ油断を許さない状況だ。ヤエがある程度距離をとってくれたおかげで
巨人の射程内に入っていない。しかし、俺たちの逃げる方向が分かるのか
アイコンは真っ直ぐヤエ達に近づいている。
ふと気になり巨人にアイコンを合わせる。
巨人の名前が別ウィンドウで表示される。
"術式傀儡ザイラ"
「術式傀儡ザイラ?」
「海さん。今なんと?」
「術式傀儡だ。俺の見えている地図で巨人の名前を見たらそう記載されていた」
その名前を聞いた瞬間、フィーラの顔が訝しげな表情をする。
「おかしいです。本来ならこの道はよほど大きく道を外さない限り危険なモンスターと
遭遇することは無いはずです。ましてや術式傀儡なんてこんな所で目撃証言なんて無いはずなのに」
「フィーちゃん。そのぐぐつ?はどういったものなの?」
「術式傀儡とは術式で出来た人形です。刻印石をコアとして人形の
身体中に導素を巡らせ稼働する自立型の人形です」
「でも何でそんな奴がこんな所に?」
「そこなんです。通常のモンスター違い、生物の如く自然に繁殖しません。
傀儡は刻印石を元に人為的に作られたものです」
「つまり誰かしらの術者が作り上げ、意図的に放った?」
「そういうことになります」
怪訝な雰囲気が漂う。
「ちなみに確認だが。傀儡は全部あんな感じで凶暴なのか?」
「いえ。術者が刻印石のコアに刻む術式によって動きが異なります。
普段の生活での利用ならば建築等の土木作業なんかに使われます。
定期的に導素を注入するのと作り上げるのに時間とお金がかかるので
滅多に使用されないのですが。ましてや"殺害"を目的とした傀儡は
見たことがないです。目的に対しての労力に違和感を感じます」
つまりロボットのように一定の動きをインプットして傀儡を動かすのか。
電力供給が切れたら稼働できなくなるのもロボットに近い。
しかし目的は何だ?
金品目当てにしたら傀儡を選ぶ理由が不自然だ。殺す事が目的でも回りくどい。
何よりこの親子に危害を加えるならば術者の術式で十分なのでは?姿を隠す理由があるのか?
「オリスさん。失礼な質問で申し訳ない。誰かに恨まれるようなことは?」
「いや。覚えがないな。ましてや恨まれたとしてこんな派手な方法をとる理由が分からん」
「私も父さんが恨まれる理由が思い当たらないわ」
だとしたら巨人の目的は親子の可能性は低そうだ。
馬を襲ったこと、ヤエを狙った状況を考えると巨人の刻印石に刻まれた術式は
生物に対する殺戮を目的としたものなのだろう。
「ねえフィーちゃん?さっき傀儡は定期的に導素を入れるって言ってたよね?
だったらあの巨人の導素が無くなるまで逃げることは出来ないかな?」
「導素切れですか。基本的には一日中は動けるのが一般的なので
おそらくまだ半日は動けるのではないかと」
流石にヤエならまだしも、残りのメンバーは半日間逃げ続けるのは大変だろう。
「フィーラ。俺が街まで救援を出すのはどうだ?」
「確かに堅実ですが、距離が少し遠いです。助けが来るまで持つかどうか…」
状況を打破する案が浮かばず状況は良くない。
都合よく強い傭兵でも助けに来てくれないものか…。
「そうか!警備隊!フィーラ。ザーストの障壁が万が一解除された際に備えて
警備隊を要請したと言ってたよな?」
「!。なるほど!警備隊に協力を要請するのですね。ザーストまででしたら
街よりも近い。助かる可能性があります」
早速、助けを呼ぼうと思ったが、もう一つ問題があった。
移動しているとはいえ、怪我人が居る為、この移動ペースだと
巨人の攻撃範囲まで入ってしまう。
おそらくあの巨人の投擲攻撃を避けられるのは現状ヤエだけだ。
ヤエが誰かを抱え、逃げることが出来るのは二人まで。
「そうだ!二人抱えてもう一人が私にしがみつけば3人運べる!」
ヤエの提案を早速試したが、一人がしがみついたことにより、
胴体周りが不自由になり上手く動けなかった。
フィーラが一呼吸入れて別の提案をする。
「やはり助けが来るまで私が足止めするしか無いようですね」
「待ってフィーちゃん!あの巨人の攻撃だったら私が避けれるから!
フィーちゃんが残るのは危険だよ!」
「私は走るのが遅いですし、人を二人も抱えて走れるのはヤエさんだけです。
それに私には術式があります」
フィーラは杖を振り、地面を押し上げるように土壁が出現する。
「投擲攻撃ならこれで防げますし、拳の攻撃なら別の術式でも対応が可能です。
助けが来るまでなら持ちこたえることが可能です」
フィーラは笑顔を見せ、ヤエが複雑な表情をする。
ヤエが次の瞬間思い切り自分の頬を両手で叩く。
「ええい!迷っていても誰も助からない!フィーちゃん!
絶対に無理はしないでね!必ず助けに行くから!」
「ええ!任されました!」
ヤエは親子を抱え、一気に走り出す。
俺もそれと同時に村の警備隊に救助を求めるために動き出した。
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ザーストの村まで地図を移動する。
ヤエを助けた初日を思い出す。
あのときは必死で考えが回らなかったが、
ヤエ以外の人にも話かけることは可能だというのは後から判明した。
ゴブリンに追われるヤエに指示を出しつつ村人に助けを求めればもっと安全だったかもしれない。
反省しても何も始まらない。この地図についても徐々に知る必要があるな。
思考を巡らせながら警備隊らしきアイコンを探す。
いくつかアイコンが集団になっている。早速アイコンをクリックし、映像を出力する。
映像に映されたのは3人の軽い武装をした男女だった。
突然、俺が映像として出力されたのに気づいた1人の少女が武器をとる。
一瞬にして間合いにつめ、手にしたナイフを振ってきた。
動きに迷いがなさすぎる!
「待った待った!危害を加えるつもりはない!というか出来ない。
術式の1種みたいなもので声と映像だけだ」
「で?お兄さんは何者なの?」
先程俺に斬りかかってきた少女が問いかける。
フィーラより少し年下だろうか。
身長は小柄だが動きが素早く目に見えなかった。何者なのかこちらが聞きたいくらいだ。
「まあまあ…。クノン。いきなり攻撃をするな。また怒られるぞ」
「だっていきなり出てきたし…。導素を感じて危険だと思ったし…」
「言い訳無用。映像のお兄さんが驚いてるだろう。謝りなさい」
「お兄さん。ごめんなさい…」
ペコリと少女が頭を下げる。
そして彼女をなだめた男性が話しかける。
「とりあえず自己紹介だ。僕は大陸統括組合の警備隊のジギだ。
この区域の警備担当を請け負っている」
「クノン…。警備隊所属」
「クラリネよ。以下同じく。よろしくね」
「海です。突然で申し訳ないです。組合所属の術者フィーラという女性を知っていますか。
時間が無いので説明は省きますが現在彼女が術式傀儡と交戦をしています。
申し訳ないですが、助けをお借りすることは出来ないでしょうか」
フィーラという名前を聞いた途端、クノンが一瞬にして走り出す動きをする。
そしてそれを止めるようにクラリネがクノンの服を猫をつまみ上げるように抑えた。
クノンの足だけがバタバタしている光景になった。
目で追えなかったぞ。完全にヤムチャ視点だ。
「なんで止めるの!クラリネ!」
「そうやって無策で突っ込むな~クノン。
判断が早いのは良いことだが私やジギが心配するぞ」
「でも…フィーが危険だって」
「友達を心配する気持ちは分かる。だけど突っ込んでボロボロになって
毎回帰ってくるクノンを見る私達の気持ちにもなってくれ。
私達だって大切な仲間だろう?」
「うん…大切。大好き…」
「な…!?別に好きとかどうとかまで聞いてないからな!」
一瞬にしてクラリネさんの顔が真っ赤になる。
口元が緩んでいる。
話を戻すようにジギが問いかける。
「海君。フィーラなのだが交戦している場所は分かるかい?」
「場所は村を出た平原の丁字路からコルス方面あたりです。
具体的な場所は直接お伝えした方が良いかもしれないです。
自分は術式で映像を投影しているだけなので、
傀儡の攻撃をくらう危険性もないです。近場まで案内できます」
「了解した。それなら海君に案内を頼もう。クノン。行ってくれるか?」
「いいの?ジギ?」
「ちょっと待って!私達は行かなくて良いの?傀儡の強さも分からないし、
クノンだけで相手に出来るかどうか…」
「落ち着けクラリネ。僕たちがこの村に警備に来たのは
術式障壁が再度解除された場合による村人の保護が目的だ。
万が一俺たちが全員向かったらどうなる。
それが術者の目的で警備がいなくなった後に村が襲撃されたら?」
「う…。確かに。すまない。冷静じゃなかった」
「気にする必要はないよ。仲間は大事だからね。
この中ならクノンが僕たちの中で一番早い。
あくまで目的はフィーラの救援。クノンの早さならすぐに助けに向えるし
傀儡と戦う必要はない。自分が勝てる相手かどうかならクノンなら分かるだろうしな」
「ジギ。分かった。あとクラリネも心配してくれてありがとう」
「無理だけはしないでよ、クノン。仲間が傷つくのは一番嫌だからね」
「うん…。それじゃあ案内お願い海さん」
「分かった。とりあえず丁字路の道は分かるか。そこに着いたら詳しい座標を教える」
その言葉と同時にクノンが走り出す。
俺は地図上のフィーラのアイコンを確認する。
巨人の射程範囲内に入る位置に来ていた事を確認した。
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走る抜けるクノンを映像の自動追跡で追う。
ヤエ程では無いがこの少女も十分に早い。
目的地まで着くまで詳しい状況をクノンに話した。
「傀儡の攻撃は投擲と拳による物理的な攻撃と単調な攻撃のみ。
蹴りとかは無いよね?」
「無いはずだ。俺が囮になった際にはこの攻撃だけ。ヤエに対する攻撃も投擲だけだった」
「海さんに反応したあたり、巨人は形と導素の流れで生物を判断しているみたい。
ある程度、考える力もあるのかも」
話しているうちにヤエのアイコンがこちらに向かってくる。
目視で確認できる距離まで来たのだろう。クノンが問いかける。
「あの娘は?」
「先程説明したヤエだ。敵じゃない」
「ん…。何か話しておくことは?」
「いや…。救助者がいる。村まで行くはずだから一旦は問題ない」
ヤエとクノンがすれ違う。
クノンと俺を一瞥し、察したのかすぐに前を向き村の方まで走っていった。
去り際に大声を出した。
「海くーーーん!協力者さーーーーん!フィーちゃんをお願ーーーーい!
すぐに助けに行くからーーーーー!」
「元気な人ですね」
クノンが少しだけ頬を緩めていた。
無表情そうな雰囲気な少女だが感情をあまり表に出さないタイプなのかもしれない。
「クノン。状況は伝えたから一旦、フィーラの状況を伝えてくる」
「よろしく」
地図を操作し、フィーラのアイコンの近辺を見る。
まだフィーラのアイコンはロストしていない。
巨人のアイコンも依然として存在している状態だ。
だが状況を判断するには目視で確認するしかない。
「頼む。無事でいてくれ…!」
俺は無事を願うように映像の出力ボタンを押したのだった。
読んでいただきありがとうございます。