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悪魔祓いの旅路録  作者: 日朝 柳
真夜中のダンスホール

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洞窟の中で

話の聞くところによると、けいききゅう座は裏星座の中では珍しく星座の里とは敵対関係にない所だと言う。

「今ではやぎ座のある大陸との中継地として大切な場所なの。基本的に外部の人は知らないから、バレないように気をつけてね。どうしても彼らにレジスタンスというイメージが結び付けられている以上、変な刺激はしないように」

彼女(後にハルカと分かる)は外部の人では無いことをバレないようにという所を特に何度も強調していた。ついでに近道も教えてくれて至れり尽くせりだ。

「じゃあ、気をつけてね」

その日の夜には、里を出た。残念ながら長に会うことはできなかったが、大きな収穫をえることは出来たので結果オーライだ。

「ごめんなさい、私のためにこんな遠回りになって」

「いいよヒナ。どうせここからは出なくちゃいけないんだ。それならどっちにしてもこの道を使うことになっていただろうからさ」

夜の中で彼女の表情は伺えないが、きっと納得してくれているだろう。

ランタンに灯した光だけを目印に地図に示された場所へ歩みを進める。森の静けさと相まって月光の無い深海はさながら洞窟を進むよう。

「そういえば、ヒナはさっきの星座について知っているのか?」

地面に生える草を踏みしめながらリルは聞く。

「初めて聞きました。私は母と別れてからは色々なところへ行ったけど、最終的にライブラのある大陸に住み着くことになったから」

森を越えると低かった草の丈は徐々に伸びていき、ランタンを頭の近くまで上げないと先が見えないほどになる。

コンっ。

何かを踏んだ気がした。気がしただけかもしれないと思う前に踏んだものが何かは分かった。

無意識のうちに上を向く。ランタンは逆さまになり、着ている服がヒラヒラと靡いた。

咄嗟に掴まれた右手の先にはアイラの鎖が繋がっている。

「良かった......」

何とか助けることが出来たと安堵の表情を浮かべる。下を見ると典型的な落とし穴のような針山が所狭しと並べられていた。その針の先には一体いつ付いたのか分からない程に変色した赤黒い血が固まっている。

「ありがとう、アイラ」

「いいえ、師匠に住み着くことにそんなこと言って貰えるなんて光栄です!」

満更でもなさそうにアイラは笑う。ヒナといえば、彼女だけは穴に落ちずに住んだらしい。懸命に鎖を引き上げようと奮起している。しかし彼女は必死に踏ん張ろうとはしているのだが、ずるずると穴に向かって引き込まれている。それに従って僕の体は針山に近づいていく。

「ヒナ、耐えてくれ!」

ただ声をかけることしかできない。それでもゆっくりと体は下へと向かっている。

もうだめかと思われたその時、穴の側面に魔石が埋め込まれているのに気がついた。こうなったら一か八か。左手でその魔石に魔力を込める。

「頼む!どうにかなってくれ」

その願いに応えてくれたのか、壁に埋め込まれていた魔石は魔力の共鳴を起こし、一つの魔方陣を築きあげる。それが光ってできたのはいつかの戦いで見た空間魔法の時空の歪みだった。

崖の淵でなんとか耐えていたヒナの力も限界に到達し、彼女の足下から地面が崩れて一同歪みに落下した。ただあの時の敵の元に繋がるゲートではないことを願いながら。


すたっ。ドン、ガンッ。

リルは二人の下敷きとなる。二人が重いというわけではないけど、かなりの高さから落ちたので衝撃はすべて僕の体がうけとめることになった。

「うっ」

「師匠、大丈夫ですか!」

踏んでしまった事を申し訳なく思ったアイラは急いでよけて僕の心配をする。

「いいや、気にしなくていい」

「ごめんなさい」

「ヒナも、別に謝らなくていい。それより二人はけがしてない?」

二人とも全力で首を縦に振る。

「それならよかった。それにしても、ここは一体」

二人にいらぬ心配をかけぬようにと話題をそらしたが、実際ここがどこだか検討もつかないでいた。周りは岩で囲まれていて壁のところどころにたいまつがあるがすべてに灯っているというわけではない。いったん外にいないことだけは分かるが、手がかりは先の見える一本道があるくらいだ。

「あっちに進むしかないみたいですね」

僕は近くの壁を杖で叩いてみるが、しっかりとした重みを感じる。隠し通路があるという感じでもなさそうだ。

「仕方ない、行くしかないか」

「たいまつは私が持つので、ついてきてください」

さすが元冒険者、用意が周到だ。壁に固定されたたいまつから火をくべてヒナが先頭となって洞窟を進む。時々聞こえるコウモリの鳴き声や何か分からない生き物が通路の端をこそこそとうごめく音にアイラはびびってしまい、さっきから僕のマントを離すまいと強く握っている。もちろん僕も得意なはずないので終始ビクビクしながら進んでいるわけだが、一方のヒナといえば何も気にすることがなくむしろ楽しそうにしているようにも見えてしまう。進むのが遅いのを気にしたのか、ヒナは振り返って僕たちを心配する。

「どうしましたか?体調が悪いなら休みますよ?」

「いや、そういうわけじゃないんだ。ただその、恥ずかしながら僕も一応女なので虫とかは苦手かなって感じで。………だから、ゆっくり進まない?」

するとヒナは少し考えだし、しばらくするとあっというような顔をして

「じゃあ今から出てくる虫とかを私が剣で動けなくしていくので、それならいいですよね?」

それを聞くやいなや、アイラは口を覆って後ろを向いてしまう。僕も、、想像はしたくない。

「いや。……もういいかな。早く行こう!」

「そうですね。行きましょう!」

こうなった空元気で進むしかない。少なくとも道の先に光は差していない。

深いため息をついて、また出口に向かって三人は歩き出す。

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