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悪魔祓いの旅路録  作者: 日朝 柳
雪に這い寄る白い影

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老婆と孫

程なくして全員が集まった。何より事態の収拾の方が大事だと思ったからだ。老婆を部屋の中にあったベッドに寝かせて話し合いは始まる。

「どうしよう」

「どうしよう、って言っても姉さんがやったことじゃないんだから気にすることじゃないでしょ。まずそもそもこれが自然死なのかもしれないし」

確かにそうだと言いたいが、さっき自分で運ぶ時に老婆の手を見たら中々にぼろぼろだった。服も決して普通の生活をしているとは思えないし何よりこの旅館を一人で営んでいるはずがない。

「とりあえず、町の人に聞いてみよう」

だがノルメルだけは反対した。

「それには僕は賛成できません。僕達の目的を忘れたんですか?このお婆さんは気の毒ですが、それはこの町の問題であって僕達の問題じゃありません。早く先に進むことを優先するべきじゃないですか。お金だって食料だって限りはあるんですから」

「姉さん、僕もノルメルに賛成だ。ここは早く進んで行った方がいいと思う。アイラだってもう元気そうだし」

アイラは言われて元気ですとポーズする。具体的に言うなら飛び跳ねているだけだが。

リルも再び考える。確かにそれを言われると痛い。彼の言うことは間違ってないし僕が感情論で動こうとしているのも事実だ。でもそれでも、何となくこの老婆の死は普通のことじゃない気がする。

「分かった。じゃあ僕に二日だけ付き合ってくれないか。それで何も出なかったら諦めるから」

「........絶対ですよ」

何か言いたげだった口を塞いで了承してくれた。

おばあさんの体に触れると、氷のように冷えて冷たい。まるで今にも氷が崩れるような脆さを感じる。


周辺の住民に話を聞いたところによると、この家にはおばあさんと一人の孫が一緒に暮らしているということらしい。両親を失った少女がおばあさんと二人できりもりしている宿らしく、ここに来る客からの評判も良かったらしい。

最近はその勢いも聞かなくなり、店を閉めているという噂が流れているということだった。

「なんだかそれだけを聞いているとそのお孫さんが一番怪しい人物にしか見えてきませんね」

アイラが宿の食堂で厨房から盗んだ干し肉を引き裂いて食べながら呟く。食堂には瑠璃以外の四人が揃っている。

「じゃあその孫は一体どこなんでしょう」

「それが分かったら苦労しないよね〜」

真剣に考えているノルメルに何も考えていないヒナが返すのでノルメルがムスッとした顔をした。

「そのお孫さんも、最近は見かけていないんだそうだ。この町にある食べ物屋には何処にも顔を出していないらしい」

「じゃあまさか、一緒に死んじゃったんじゃ」

一人で恐怖度を上げるアイラにヒナも顔を引き攣らせて二人で抱き合う。こういう時の息はピッタリだ。

「流石にそれはないと思う。暫く見てないってことは数週間はこの宿は誰にも手入れされていないって事になる。でも埃も殆ど溜まってないってことは誰かが掃除をしていたってことじゃないかな」

そう言われてみれば、カウンターにも埃はなかったし綺麗なホテルだと入った時に思った。

「じゃあこのホテルにそのお孫さんが居るってこと?」

「それは僕にも分からない。ヒナもぼーっとしないで何か考えてよ」

「私は冒険担当だから」

「そんな担当初めて聞いたけど」

「とにかく担当なの!」

ヒナは頭が使うのはあまり得意では無いので意見は投げかけてこない。代わりに行動に移す時はとても頼りになる。

灰色の雲が空を覆い、どんよりとした空気が気持ちを沈める。真剣だった空気も少しずつ緩んでいくのを感じた。時計は夕暮れ時を示す。宿に入って早々こんなことがあったせいで皆も疲弊している。

「今日はとりあえず休もう。こういうのはちゃんと寝てから考えればいいよ。疲れてちゃ頭も働かないからね」

ご飯を一通り食べ終えて、このままタダで宿を使わせてもらうのも申し訳なくなったので袋にお金を入れてお婆さんがの寝台の近くに置いておく。

雪の町の夜は布団にくるまらないと死んでしまいそうな寒さだった。結局女子と男子に別れて同じ部屋で寝ることにする。じゃないと凍死しそうな勢いだった。


ーーー食料庫の中

私は一人泣きじゃくっていた。もう何日経ったのか分からない。それでも涙が枯れることなく流れていく。おばあちゃんが死んじゃった。

その現実を受け入れることが出来なくて嫌なことがあった時にいつも隠れているこの食料庫に閉じこもっていた。

お腹は空くし、喉も乾く。周りにある食べ物や飲み物は飲むけどここから出たくない。私はまだおばあちゃんと一緒にいたい。

ただそれだけを願って日々を過ごしていた。だから突然の出来事に私は受け入れることが出来なかった。



翌朝、目覚めたのは食べ物の匂いが漂ってきてだった。眠い目を擦りながら部屋を出て、食堂へ向かう。テーブルには暖かなスープとこんがりと焼けたパンが五人分並んでいた。

そして、僕はそこにいる存在に目を疑う。昨日、死んでいたはずの老婆が料理を作っていた。

「おはようございます。料理はもうすぐ出来上がるんで少し待っててくださいね」

隣には小さな少女が手伝いをしている。この子が居なくなっていたはずの少女のはずだ。

これで想定は確信的なものへと変わった。この子には何かがある。少女の心の内に潜むものを捕えなくては。

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