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悪魔祓いの旅路録  作者: 日朝 柳
海底2万マイルの旅

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疾走

羽城の支配者は慣例で女と決まっていた。現兎人の族長兼城主はある一人の女性が支配権を持っていた。彼女は自室にリルの凍体を運ばせ、ただただ彼女の仲間が来るのを待っていた。すると廊下を急いで走る足音がし、扉を勢いよく開けて息が絶え絶えになった老婆が口を開く。

「マレナ様、妹様の魔力感知が行えなくなりました」

もうやられてしまったのか。あんなに一人で行くなと言っても行ってしまう。妹らしいといえば妹らしいけど、仕方ない。

「分かった。臨戦態勢に移行して。城壁には常に警備を配置させて、敵が来たら直ぐに私に知らせること」

「承知致しました」

行きとは違って静かに扉から去ると、足音もなく部屋から離れていく。遂に私の復讐劇が始まる。そう思うと、自然と何か心が満たされていくような感じがして、落ち着く。早くやって来て欲しい、そして私の前で泣き崩れる彼らの顔を早くみたいなぁ。

震えるこの手は武者震いなのかはたまた違うのか。彼らか来ればそんなことはすぐに分かる。氷像に映るリルのその無垢な顔を、早く粉々にしたいと思った。


「砂漠を抜けましたよ。ここからは直ぐに着きます」

町を抜けてから二日、どれだけ進んだかは分からないが、やっとただただ地平線に広がる砂だけの世界は終わりを告げ、広大な自然と雄大な山々の植生へと変化する。

「あの山を抜ければ、地下都市ミネスです」

山は近づいていくと思ったほどの高さは無く丘に近い感じだ。馬を使って簡単に登りきることができ、丘の麓には周りが池で囲まれた小さな地下への穴が見えた。

「あれが、その穴か?」

「そうです。ただあの穴の下はかなり深くまであるのでそのまま落下したらたぶん確実に死にます」

「それなら大丈夫だよ」

後ろで楽観的な声でパレルナが話に入ってくる。彼女は自分の杖を取り出して、それを振るってみせる。

「あっ」

「そう。私の糸魔法があるでしょ?」

「さすが、そういう時だけは役に立つね」

「いつも役に立ってるでしょーよ」

笑いが溢れ、和やかな空気が流れる。再会以来、不穏な空気が流れていたのを断ち切るような笑いはきっと彼らなりに私に気を使ってくれていたんだろう。

「っと。その前に」

彼女が立ち止まる。みんなが振り返ると、手を合わせてこちらに懇願している。

「今回は私に作戦の指揮をさせて!」

ポカンとしていると、スクルトが補足説明に入る。

「今回はパレルナの魔法が鍵になると思う。だから、出来れば彼女の動きやすい作戦にしたいって二人で考えてたんだけど、それで二人は構わないかな?」

いつの間にかリルの奪還にヒナもメンバー入りしていることにヒナ自身が抗議の意を示そうとしたが、誰一人として彼女の言葉を無視していると、やがて仕方なしと承諾してくれた。

「私は構いません。ヒナは?」

ヒナは頬を膨らませて怒りながら、

「いいですよ!どうせ参加するんだから。なるようになれです」

不貞腐れてしまった彼女の頭を撫でながら、慰める。すると照れくさそうに「分かった、分かったから!」と言って頭から手をどかさせる。私自身も慣れない事をして、顔が熱くなる。

それを見てパレルナとスクルトが笑い、私とヒナはやいやいと怒る。そんな私たちの姿を見て少しだけ心が安堵する。

アイラの戦いへの心構えは、「緊張しない」だ。どんなに敵が強くても緊張していては実力が発揮できない。だからこうやって場が柔らかくなると、なんだか安心してしまうのだ。

それを分かってノってくれた執行人の二人にも感謝する。これで、きっとリルを取り戻せる気がする。

日が暮れて、虫の鳴き声が響く。糸魔法を使って池を超え、穴の前まで向かう。

「じゃあ、始めるよ」

パレルナがそう言うと魔石を宙に投げ、彼女が炎の魔法を放つ。魔石は砕けてキラキラと舞い散る。その欠片を被ると、今まで暗かった視界が昼のように明るくなる。

「暗視の魔石。さっき買ったんだ。これで、この穴の中もよく見える」

覗くと、下に魔法陣のようなものが見える。

「あれが私を地下から地上に行かせた魔法です。跳躍の魔法らしいんですけど、私は聞いたこともないです」

「多分それは固有魔法だよ」

それなら確かに納得が行く。つまりそれは、彼らも星の導きにあるということだ。

「星座の導きがあるということは。今回の件、だいたい見当がついたよ。さあ、降りようか」

杖を振るい魔法を唱えると、糸が壁に沿って糸が張られていき螺旋階段のように地下へと向かう坂道が出来る。

「走って。絶対止まっちゃダメだよ」

そう言ってパレルナは走り出す。坂の勢いと自分の走る力でそれはもうとても早く坂を降りていく。続いてスクルト、ヒナも走り出し。アイラもついて行く。

しかし走り出して中腹まで行ったところで、アイラはつまづく。勢いよく走っていたのでそのまま彼女は坂道を転がっていく。

「うわぁぁぁあぁぁー!」

その声を聞いてパレルナは

「走って!」

そう叫んぶ。だがそれももう手遅れだった。転がったアイラはヒナにぶつかり、スクルトにもぶつかると、最後にパレルナにぶつかってその勢いのまま糸の階段が切れたところでそのまま落ちていく。

間一髪パレルナが糸魔法を使ってくれていたおかげで落下の怪我は無かったが、叫びまくったせいでその地下の空間には兎人が集まっている。

「なんだお前らは!」

こうして見事に潜入作戦は失敗した。

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