睨み合い
無言のままクスケは戦場から帰還した。鏡の中で何があったのか僕達は知る由もない。だが、彼が自分のプライドを折ってしまうほど圧倒的な差で負けたということは事実だろう。
「よく頑張りました、とは言いません。ですがゆっくり休んでいてください」
一見厳しい物言いにも聞こえるが、これが瑠璃にとっての気遣いなのだ。
「ありがとう」
そう一言残すと、彼は休養室へと向かう。そんな不穏な空気の中でも、試合は刻刻と進んでいく。
次の試合はシーナ。前戦と変わらず、ここを勝つことが出来ればかなりのアドバンテージをとることになる。
「クスケの仮は返してきます」
「頑張って」「応援してる」「......」
第4試合、相手はアナという少女。うつろな表情とは裏腹に彼の目からは闘志がみなぎっていた。
「試合開始!」
戦いの火蓋がきられる。が、互いに動く気配がない。
視線をぶつけて威嚇をし合っているだけだ。1分、5分、10分経っても二人は1歩も動こうとしない。
ヤジが次々と飛んでくるが、審判は止めることをしようとしない。そう、見た目では動いていないように見えるが、2人からはかなりの量の魔力が放出されていた。
「何か分からないけど、何かをしている」
リルはそう表現することしか出来ないが、他のふたりが言ったとしてもきっと同じようなことを言うに違いない。
「なんの魔法なんでしょう」
「多分精神系の魔法だ。何かの本で読んだことがある」
瑠璃によると、精神を互いに共有して相手を支配するという魔法らしい。だがデメリットも大きく、相手だけでなく自分も動けなくなり互いの魔力を消費し続けるため、どちらかの魔力が尽きると強制的に解除される点などがあるらしい。
「めんどくさいね」「ですね」
「でもメリットもある。例えばこういう決闘形式の戦いだ。こういうのはだいたい1体1だから魔法を使っている間に襲われるとかもない」
ならではの戦い方だ。でもだからこそ真価を発揮する魔法を使ってきた。シーナはどうやって対処していく?
精神世界




