紫電
「水牢!」
杖の先から出てきた水の玉によって次々とハクの魔法と相殺されていく。
互いの魔法が物理合い、キラキラと輝いては消えていく。そんな綺麗な絵とは対照的に戦いは白熱になっていく。
見えないハクの攻撃に瑠璃は為す術もなく防戦一方な状況が続いていく。だがそれこそが瑠璃の作戦だった。炎の魔法と水の魔法がぶつかり合うことでだんだんとその場の湿度は上がっていき、ジメジメとした感覚を肌が感じ始める頃合いだった。
次の彼の炎魔法に合わせる!
瑠璃の予想通り彼は死角から容赦なく炎魔法を叩き込んでくる。それをギリギリで感じとった瑠璃はその魔法に水魔法ではなく、風魔法をぶつけた。
瞬間風は吹き荒れ、空へ立ち上るように気流の波ができていく。
「くそ、上昇気流か」
「ご名答。これが僕の狙いだよ」
湿度を含んだ地上の空気は上昇気流によって上へ上へと押し出されていき、空の凍るような気温によって冷やされていく事で雲を形成していった。
晴れ模様が一変、天候は雨へと変化する。瑠璃は天候魔法が使えていたらなと心の奥底ではそう思いながらも目の前の敵を前にそんな思いはかき消される。
「それじゃあ僕は高みの見物でも決め込むよ。せいぜい避雷針にならないようにね」
電磁浮遊で空へと飛び上がり、悠々とハクを眺めていた。
それでも彼は諦めずに透明化と炎の魔法で少しでも傷を与えようともがく。だがそんなものは極大なる一撃の前では無力だ。
「もう終わりだよ。紫電!」
声とともに空は雷という名の雄叫びをあげて地面へと向かう。地面を帯びた電気からハクも少しずつ電気を受け取っているため、雷は容赦なく彼を貫く。
ドオンッ!という音と共に彼の姿をはっきりと示し、地面へと倒れた。
カンカンカンカンッ!
「勝者、ライブラの瑠璃〜〜」
勝敗の決定と同時に天候、地形共にかき消され晴れた空、草の生えていない裸地となった。
勝利による歓声が響き渡る。瑠璃はハクの元へと向かい、手を伸ばす。ぶっきらぼうな顔をしながらもハクはその手を受け取り起き上がる。
「ありがとう。いい戦いだった」
「........こちらこそ」
和解の光景を見た人々は再び歓声をあげて退場する2人を見送った。
「お疲れ様〜」
「よく頑張った!」
などと4人から励ましの声をもらう。照れくさくなったのか顔を見られたくなかったのかは分からないが、背中を向けながらではあるが、
「ありがとう」
と一言だけ残して彼は休憩所へと向かった。
「次はタッグバトルだね。二人とも頑張って」
「負けんなよ」
そんな二人の応援を貰い、
「はいっ!」
「うん」
それぞれに返事をすると戦いの場へと赴いていく。




