衝撃
「.................」
旅客船の中では部屋でくつろぐ人もいれば、レストランで食事を楽しむ人、外へ出て海の風を浴びる人など様々だった。
そんな中二人は難なく乗ることはできたわけだが、どちらも表情は曇っている。
アイラの透明魔法で船に乗ることはさして難しい話ではなかった。しかしこの魔法はアイラとアイラの触れる物にしか発動することができない上に、アイラが触れればなんでも透明にするし、触れられた人も僕達のことが見えるようになる。さらに持続時間もそこまで長くないなど、彼女の魔法はこの船に乗るための最も安全な策ではあるが、最も向いていない魔法だったのだ。
周りの人に当たらないように神経を集中しすぎるので二人はすぐに疲れてしまい、何とかバレないようにとトイレの中で魔法を解いた。
「このままじゃ私たち二人とも過労死しちゃいますよ!」
「ならここで船が着くまで待てばいい」
するとアイラは急に頬を赤く染めてモジモジし始め、俯いてしまった。もともと肌が白いので余計に赤くなっているのが際立っている。
どうすればいいのかわからなくなってしまったアイラは、とりあえず彼女を抱き抱えることにした。優しく腕に包み込まれた彼女はその瞬間、衝撃的な驚きとともに深い安堵を抱いてリルに微笑んでみせた。
きっとこれで良かったのだ。彼女はもうさっきまでのことを気にすることも無く笑顔になっている。
「じゃあもう少しこの船を見て回りましょう」
「そうだな。ここにずっといるって言うのもなんだか暇になる気がするし」
そう言ってアイラとリルは再び手を繋いでトイレの個室から出ていく。心なしか彼女の手はさっきよりも少し暖かかった。




