禁忌
僕はこのことを隠してライブラを出た。見せたくなかった。
僕は魔法使いではなくあえて祓魔師を選んだ。理由はただ一つ。他の魔法使いの前でこの魔法は使えないから。
話は変わるが、悪魔を祓うためには札を使う方法と、悪魔を対象から引き剥がして悪魔と戦って倒す方法、そして対象ごと破壊あるいは殺すという3つの方法がある。
そんな中僕はこのどれにも属さない祓いかたを得意としていた。
対象の時を戻すという方法だ。これならまず対象が取り憑かれる前の状態になるわけだから、祓えないものなんて無かった。
たちまちなんでも祓うことの出来る祓魔師が現れたと噂になった。
どんどんと仕事をこなしていき、最速の祓魔師と呼ばれるほどに一時期は呼ばれていた。その経験を生かし、僕は19歳という異例の若さで祓魔講師となった。
魔法協会の人がやってきたのはそんな仕事の軌道にも乗ってきて生活にゆとりができてきた頃の事だった。
魔法協会の本部に収集が掛けられたという通知だった。本来協会から呼ばれることなどほとんど無いが、何も変なことをした覚えがないため、催促を無視しようかとも思った。でも行かないで何かを言われるのもなんなのでとりあえず行っておくことにした。
協会本部は神妙な趣で、ピリピリとした空気が肌からも伝わってきた。歩く度に酸素が薄くなるような気になる。足取りはどんどんと重くなっていき、何とか会合部屋の前までたどり着く。
「失礼します」
そう言って扉を開けると12人の長達が円卓上に座っていた。
「そちらへ」
そう言われて13番目の席が出現し、そこに言われるがまま座る。向かいの方に座っていた一人の長が神妙な顔つきで口を開く。
「突然君を呼び出したのは他でもない。君の魔法についてだ」
僕の魔法?それも12人の長が揃うまでして話し合うことなのか?僕が史上2人目の重力魔法の使い手だということ以外に心当たりがない。時間魔法の事だって僕はまだ誰にも教えてない。
「我々十二宮の面々で話し合った結果、君の魔法である時間魔法は禁止魔法とすることとなった」
え?突然の宣言に戸惑いを隠すことは出来なかった。なぜ僕の魔法を知っている?心の中を覗かれているようで彼らを慄く。緊張で握った拳が汗で滲んだ。
ライブラの長が状況を説明し始める。
「君のその魔法は特異故に唯一無二。恐らく今後100年、いや1000年はその魔法を使える人は現れないかもしれない。だが、だからこそその魔法の価値は無限大に広がっていると言ってもいい。これまで禁止魔法に指定されたものとは明らかに次元の違う魔法だ。時間の支配は世界の支配と同意だ。君にその意思がなかったとしても可能性がある以上、魔法協会としてその魔法を認める訳にはいかないんだよ」
こんなの納得がいかない。それはつまり彼らにとって都合が悪いから排除するということじゃないか。リルもここで引き下がる訳にはいかない。
「それじゃあ納得がいきません。僕のこの魔法で今までどれだけの人を救うことが出来たのかわかるでしょ?祓魔師にも無理だとさえ言われていた悪魔を祓うことさえできるんです。協会にとってもこれは有益なことじゃないんですか?」
すると今度はとても低いトーンで重圧的に彼は言った。
「協会にとってもそれは害のあるものだ。なぜだかわかるか?君の魔法がある限り、世界の全ての悪魔は君だけで祓うことができる、つまり私たちの存在は必要ないということなんだよ」
「君自身が協会よりも上の権威に立つことが許されると思うか?」
ここでリルは初めて自分の魔法の異質さに気がついてしまった。あらゆる悪魔を祓うことは必ずしも祓魔師たちにとっての救いになるとは限らない。
もう言い返す言葉も無くなってしまい、黙り込んでしまう。
「異論はないな?」
「.........」
「ないな?」
「........はい」
こうしてリルの時間魔法は半永久的に禁止魔法となった。




