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悪魔祓いの旅路録  作者: 日朝 柳
花園に咲く一輪

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105/110

忠実であれ

 眠っている彼女は、きっとその夢の中でも僕を探しているんだろう。杖を握って、彼女の悪魔を祓う。

「これでもう大丈夫」

 まだ体が重い。きっとこの町、もしかしたら大陸全体に欲望にあらがえなくなるような暗示、もしくは魔術が仕組まれているのかもしれない。

「師匠、私ももう限界みたいです」

 やっぱり疲労はとれていなかった。ただでさえ日ごろからアイラは僕たちのために魔力を過分に使っているだろうに、さっきの事実を知った今では僕はもう彼女に何かを頼もうなんてことは考えることができない。町の様子はヒナと見に行くことにしよう。僕は彼女に毛布をかけて隣で座っていたら、自然と彼女は目を閉じて寝息を立てる。

 それを見て僕はヒナを読んで部屋を出て受付に向かう。

「では、夜にまた戻ります」

 宿の受付にそう言い残すと、僕らは再び花の街へと繰り出した。

「リルさんとこうやって二人で街を歩くなんて、初めてですね」

 確かに、僕が彼女と二人で歩いたことは無いかもしれない。「そうだな。結局ずっと忙しくてなんだかんだしっかり話す時間はなかったな」

「別に気にしているというわけじゃないです。……アイラは良くなりそうですか?」

「それなら大丈夫だ。一時的に魔力の消耗が激しくて寝ているだけだから。多分明日には良くなるはずだよ」

「良かった」

 緊張気味だった彼女の表情が少し緩んだ。だからなんだか空気がいつもと違ったのか。

 しばらく歩いていると、街の端までたどり着く。再び引き返そうとして僕は足が止まる。

「あれ」

 僕が指さす先に何かの尖塔が見える。

「変ですね。周りには何も無いのにあの建物だけがある。まるでここに来てくださいと誘ってるみたいです」

 怪しさが故に逆に気になる。この街はこれ以上散策しても手がかりは掴めそうにない気がするから、下見でもしておくべきだろうか。

「少しだけ周りを見てみよう」

「そうですね。でも、いいんですか?アイラと一緒じゃなくても。きっと後で知ったら絶対怒りますよ」

「別に中に入るわけじゃないんだから問題ないよ」

「リルさん、それフラグって言うんですよ」

 花畑を歩いていくと、尖塔の全景が少しづつ見えてくる。二本の尖塔はまるで何かを守るかのように見張り台がそこにあり、中央の神殿を守るように配置している。

 キラキラと光が反射するのが、見張り台らしきところから見えた。

「まずい」

 ヒュンッ!

「きゃっ」

 僕は彼女を押し倒して木の裏に隠れる。ほとんど花畑なこの場所で近くに木があったのが幸いした。

「完全に敵対モードに入ってる」

「どうしますか」

「見張りがいることはわかった。あとはアイラの体調を整えて万全の体制で戻ってこよう」

 アイラがいれば透明魔法でかわせるかもしれないし。

「よし、3秒数えるからそしたら街に向かって走って」

「分かりました」

 3、2、1。

「今だ!」

 彼女は木の裏から走り出す。同時に僕は尖塔の方に立って杖を構える。

「雷魔法、スパーク」

 ただの閃光。だけど見張りにとってその一瞬の光で目を潰されることは、相手を見逃すことと同じ。無闇やたらに矢を放っているが、どれも的外れで当たることは無い。

 尖塔は徐々に小さくなって、見張りの姿は目では確認できない。ここまで来れば安全だ。

「ごめんヒナ、でも結果オーライということで」

「そうですね。別に怪我をした訳でもないですから」

 宿に戻ると、既に彼女は目を覚ましていて僕たちが戻ってこないことに相当ご立腹だった。

「師匠!なんで勝手にそういうことするんですか?」

「いやアイラも疲れてるから先に次に向かう場所の目算でも立てようかと」

「はぁーー。許せません!私がちゃんと魔法で補助しないと。いざと言う時どうするんですか!」

 そのセリフはどちらかと言うと僕が彼女にかけてあげるべきだけど、あまりにも懸命に言うので僕はうんうんと頷くことしか出来ない。

 それを静かに見ていたヒナは、堪えきれなくなったのか笑いをこぼしてしまう。

「ふふっ。仲がいいですね」

 アイラは「仲が良い」というところに反応して、つり上がっていた眉はゆっくりと下がる。

「そうだよヒナ。私は師匠と仲がいいの」

「まぁそれはそうだね。僕もアイラは大事だよ」

「なんですか急に///」

「もちろんヒナも」

 僕は彼女の頭に手を当てて優しく撫でる。それを見ていたあいらはぷくーっと頬を膨らませて風船のように怒る。

「やっぱり許しません!今日は何か美味しいもの食べに行きます、もちろん師匠の奢りで!」

 アイラは一番に宿を出ていってしまう。僕は苦笑いしながらヒナに何か悪いことを言ってしまったのだろうかと聞いてみたが答えてくれなかった。

 いつも以上の豪勢な料理を酒場で食べる。たまにはとお酒まで頼んでしまう始末だ。

「さっ、明日はその下見をしたところに行くんですよね。ならたっぷり力を貯めておかないとですね」

 どこであっても、酒場は人がわいわいはしゃいでいて元気になる。明日の不安などかき消してしまうように。

 塔の見張りは今もキラキラと月夜に反射して硝子を光らせる。

「ワシの城に不届き者がやってくる匂いがする」

 身長に見合わぬマントをヒラヒラと靡かせながら、幼女は月夜の中不敵に笑った。

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