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悪魔祓いの旅路録  作者: 日朝 柳
真夜中のダンスホール

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102/110

決勝ラウンド

「さて、予選の全4ラウンドは無事に終了致しました。どこも素晴らしい踊りが見られましたね!」

最後の組の休憩も終わると、司会の進行によって場は進んでいく。会場には再び人がごった返し、昼を回ったこともあってか盛り上がりは第1ラウンドの比ではなかった。

「みなさんも気になっているであろう決勝ラウンドに進出するペアの発表に参りたいと思います。それでは第1ラウンドからの発表です」

司会が、台本の紙をめくる。恐らくそこには選ばれた面子が書かれているのだろう。

「ではまずは1組目、モロー・ヌモレナペア!」

大きな歓声が同時に巻き起こる。選ばれた当の本人らはハイタッチとかなりクールだ。

「2組目は、ハチス・エクトネペア!」

大きな歓声の中、2人は大きく息を飲んだ。残っている枠は一つ。そこで選ばれなければ、決勝ラウンドには残れない。

「それでは最後の1組です。それは、ミヤ・モヤペアです!」

2人の名前が呼ばれることは無かった。だが、失意の念に陥ることもなかった。むしろ僕らはよく頑張った方ではある。

「残念でしたね」

「まぁ、仕方ない。元々無謀な挑戦ではあった。あそこまで踊れるようになったのもヒナのお陰だし、ホントにありがとう」

「そんなこと、ないですよ」

「少し長居しすぎたみたいだ。ヒナは出発する準備をしていてくれ。僕はアイラを呼び戻してくる」

占い師に会うことが出来ないのならこの町に居続ける意味もない。悪魔だって僕が魔法が使えない今、まともにやり合えるとしてもアイラしかいない。だが彼女は一人でやり合うには力不足が否めない。

けいききゅう座の魔法使いを探して早く地上に出ないと、いつ僕が魔法を使うのが避けられない状況に陥るか分からないし。

それにここが魔法の里というには魔法を使える人が少なすぎる気がする。民衆に溶け込んでるせいなのかどうかは分からないが杖などを持っている人が見当たらない。むしろ僕らの方が浮いているような感じがする。アイラとはすぐに合流することができ、その間会場に残ったヒナは決勝ラウンドに進出する人の発表を眺めていた。僕らとは違い彼らは難なく決勝に進み、余裕の笑みを見せることで会場の女性を虜にする。やはり魔法を使う素振りはなく、彼の素こそがまさに魅力的なものなのだと知らしめる。

やはり、彼が決勝ラウンドに進んだという事実を噛み締めると自分たちがいかに自信過剰であり傲慢だったかが分かる。

「アイラ、ここら辺で魔力がはっきりわかる場所は?」

「えっと待ってください。北東です」

「じゃあすぐに行こう」


盛り上がる町とは違って中心から離れるほど、その町の廃れた部分が垣間見える。すれ違う人々は僕らを一瞥することも無く通り過ぎていく。

「静かになりましたね」

「不気味なくらいだ」

建物も、歩く人の姿もまばらでもあるというのにそこには人の気配を感じない。ただただ隅に隠れる虫のように静かに息を潜めている。

さらに歩を進めると大きな建物が見えてくる。その大きく縦に長い建物はどこか協会を連想させる。

「すみません」

近くを歩いていた杖を持った若そうな青年に声をかけると、何かに怯えるようにして逃げていく。何人かに声をかけたが返ってきた反応はどれも似たようなものだった。

やはり噂は嘘なんじゃないかと疑いの気持ちを嫌でも持たざるを得ない。不安な気持ちを抱えながらも、その建物のドアをノックした。

「はい、どうぞ」

優しそうな老人の嗄れた声が中からして、僕はそっとドアを開けた。

「貴方達は、見ない顔ですね。旅の者でしょうか」

大きな椅子に腰掛ける老人は長く伸ばした髭を触りながらそう尋ねる。頷いて返事をするとそうですかそうですか、と立ち上がって戸棚を開ける。そこからカップを幾つか取り出すとテーブルに置きさんにんを腰掛けるように促す。

「まぁ、そんなところでたっているのもなんですからどうかお座りください」

明らかに年下である僕らに対しても丁重なおもてなしをする老人。なんだかそれが申し訳ないながらも言われるがままに椅子に座った。

「それで、今日はこんな辺鄙な町に何をしにいらっしゃったのですか?」

老人は杖で一つ円を描くと、魔法によってどこからか急須が出てくる。それを受け取って4つのカップにお茶を注いでいく。

「その、空間魔法を使える人を探してまして。アクエリアスの地上への入口が今は使えなくなってしまったので、他に出る方法がないかと模索していたら空間魔法なら地上に出られるかもしれないと聞きまして。どうしても僕達すぐに地上に出たいんです」

「まぁ構わないよ。我らは地上と海中を繋ぐ中継者、それを生業としているのだから断ることは無い。だが、生業をしているということは対価を貰っているということ。タダでは流石に通すことは出来ない」

もはやならず者に近い僕らに失うものは少ないが、何一つない訳では無い。無理矢理通るのはよしておこう。

「その対価というのは何ですか?」

「魔法の知識」

彼の目の色が変わった。だけども裏星座だとして、仮にもここは魔女の里だ。空間魔法という固有魔法を保持していながら一般魔法の知識がないなんてことが有り得るのか?

「あなたは、空間魔法以外に使える魔法はありますか?」

「.........ない。だからこそ、その知識を対価にしてもらっている。この地には最初から空間魔法しかない。その教本があったのみ。これもエア様の慈愛なのかね」

エア様?

「つかぬ事をお聞きしますが、教本というのは何処にあるのですか?」

「それなら、数年前にある男が魔法の知識と引き換えに持っていった。大量の資金と魔法の知識のおかげでここまでこの街は発展できたんだよ」

どうして?と喉までかかった言葉は口に出ない。何も知らない僕が言えるようなことでは無いからだ。

なら、どうして今更魔法の知識を知る必要があるんだ?という疑問も出てくる。

「その男に聞いた魔法の知識では、足りないのですか?」

「足りない。今空間魔法を使えているのはなにも我々自身の力によってでは無い。他の裏星座に助けられた形での保持だ。なんせ魔女文字を読めないのだから、その教典とて読めるはずがないからな」

嫌な事ばかりが彼の口から出てくる。そうだとするなら、この里は魔女の里なんかじゃない。その教本は十中八九魔導書だ。それ即ち、僕ら以外にも魔導書を集める人達がいるということであってそれが誰なのかすらも分からない。

「そうですか。では、魔女文字については教えます。でも出来るだけ早く済ませたいので、1冊のノートに全て記しておきます。はい、終わりました」

こんな所で時間を食っていたら、ただでさえ見つけられない魔導書が余計に見つからなくなる。魔力はかなり持っていかれたが1冊のノートに僕が知りうる魔女文字については一通り書いたつもりだ。

「おお、これが魔女文字ですか。やっとここにある多くの本を解読することができます。すぐに、カプリコーンへ繋ぎます」

「ありがとうございます」

協会の中にある魔法陣が予め敷かれた地下に僕らは案内される。老人が詠唱することで、確かに歪みが生まれた。

「どうぞ、ここからカプリコーンに向かいます」

僕らはその歪みに足を入れる。

落ちた先、目を開けると足元には小さな花が地面を埋めつくしていた。顔をあげるとその花園は一面に広がっていて、陽気な風が花弁を揺らす。

「うわぁ」

「綺麗です」

2人が感嘆の声を上げて、しゃがんで色々な花を見ている。

「ここがやぎ座のある大陸」

僕は、疲れた体をそっと床に着いた。

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