お局様と馬野郎
今日は同僚の話をしよう。
よく飲みに誘ってくるケンタウロスの馬場だ。馬場はその脚力を買われて外回りの営業に配属されたが、出先で毎回酒を飲んでは人身事故を起こす、極度のアルコール中毒者である。
彼は故意に人間を襲ったわけでもなく、飲酒しての走行中、たまたま歩道にいた人間をたまたま轢いただけなので条約違反にはならないらしい。
ある日突然、アル中の軽車両が突っ込んでくるとか、ヤバいことこの上ないだろう。
今日も馬場の奴が誘ってきたので、断りを入れるついでにウイスキーボンボンを与えると喜んで帰っていった。仕事しろよ。
「ねえ、田中さん。あなた馬場さんと仲良いわよね。連絡先とか、知ってる?」
その後、あいつのせいでお局様のオークに絡まれてしまった。どうやらお局様は馬場のことが気になるらしく、横目でチラチラと見てニヤついているのはキツイものがあった。
「あぁ、特に仲良くないですが、連絡先くらいなら教えましょうか?その代わり、誰に教えてもらったかは秘密でお願いします」
「ホント!?あなたって、顔はイマイチだけど優しいのね。好きにはならないけど。ぶひっ」
思わずその豚鼻にコンセントを突き刺したい感情を抑え、馬場の個人情報を売り渡してやった。お局様は僕の隣の席なので、奴の来る頻度が減ればいいなと思ったのだ。
次の日、豚と馬が僕の席の周りでイチャイチャしていたので絶望した。
僕の出社に気づくと、馬場はそそくさと持ち場に戻っていったが、お局様はうっとりとした表情で
「馬って、すごいわよ♡」
と呟いたので、ノータイムでコンセントをぶっ刺したのだった。