005 僕の冒険はこれから始まる!
「じゃあ、そうだね。領主様の紹介でギルドに加入したから、一番下から二つ目のランクの依頼まで受けられるよ」
「紹介があると変わるんですか?」
「変わるとも。S、A、B、C、D、E、Fにランクが別れていて、紹介状があると初期ランクが変わってくる。Cランクともなれば貴族様から頼まれた仕事にも関わってくることがあるから、その都合で最初からS,A,B,Cランクにするのは難しいね。複数の高位貴族様からの推薦があれば変わってくるんだけど・・・・・・」
ギルドマスターがそこで言葉をもにょにょってした。どうしたんだろう? こーい貴族って何かな? お父さんより偉い人なのかな?
「カナタ、推薦っていうのはね。カナタはすごいんだよ! って他の人に言ってもらうことなの。Cランク以上はお父さんよりも地位の高い・・・・・・偉い人たちにすごいんだよって言ってもらう必要があるっていうことよ」
僕、なんとなくわかった気がする! お父さんは貴族だけど、僕をすごいって言ってくれてるのはお父さんしか居ないから僕、えらくなれないんだね。そっかー。僕、頑張るっ!
「そういうことだね。ただ、貴族の推薦は重い。責任を伴う行為だ。だから普通は中々推薦してもらえなくてDランクで足踏みする。根無し草で禄に教養の無いやつが貴族を相手になんか出来ないからね」
ふーん、よくわかんないけどわかった。僕をすごい! って言って頭を撫でてくれるお父さんより偉い貴族の人はあんまりいないよっていう話しだよね? そうだよね?
「今はその話しはいい。ランクが上がる頃にしてやってくれ。でないとカナタが覚えていられない」
『そんなことないもん。僕、ちゃんと五日前にお父さんの服を毛まみれにして怒られたこと覚えてるもん!』
僕、ちゃんと覚えてるんだからね。そんなすぐに言われたことを忘れる悪い子じゃないもん。悪い子にはおやつあげないよってお母さんのお母さんのお母様に怒られたからちゃんと覚えられるもん!
「今のカナタにはまだ早いから、また今度聞きましょう?」
お母さんはしゃがみ込んで僕の頭を撫でてくれた。僕はそれに甘えてお母さんの柔らかい手に頭を擦り付ける。もっと撫でて-。ゴロゴロ言っちゃう。
「一応確認しておくが、カナタはどれぐらい言葉が読めるんだい?」
「カナタは賢いので、殆どの言葉を読むことが出来ます。ただ、意味まで理解しているかは」
「まぁ、意味がわからなかったら職員に聞いてくれ。文字を読み上げるのは有料だが、言葉の意味を教えるぐらいは問題ない。読めさえすれば基本的に問題ない。何かしらの条件付きの依頼だと、ギルド側に説明義務があるからね。そうでない依頼は」
『依頼は?』
「とってこい、倒してこいの二択だね」
『わかったっ!』
とってこいと倒してこいなら僕でも出来そう。わくわくするなぁ。僕、猫だけど頑張るからね、お母さん。むふぅ。
「大丈夫かしら、お父様」
「カナタなら大丈夫だろう。ユリア、この間は慌てて忘れていたようだが、カナタとお前は契約で結ばれている。その契約のパスを使ってカナタを導いてやれば問題ないだろう。」
お父さんが言う通り、僕にはお母さんがついているんだから大丈夫。僕、わからないことをがあったらちゃんとお母さんに聞いて、それでもわからなかったら周りの人にちゃんと聞くもん。
「心配ならカナタに基礎的な知識を教えて貰えるよう、依頼を出すとしよう」
「御父様、いいのですか?」
「構わない。カナタの成長がお前の成長に繋がるのだから。カナタが強くなれば、それだけお前の身体が強くなって自由に動けるようになるだろう」
僕、お母さんの為に頑張るよ! そしたらきっと、いつかお母さんと一緒に冒険にいけるよね。
「ならその依頼は私が受けよう。何も説明もなくギルドに猫が居たら何か問題が起きるかも知れないからね」
「ギルドマスターが直直に受ける依頼じゃないだろう」
「その、構わないんですか?」
ここの一番偉い人が僕に色々教えてくれるの?
「構わないさ、領主様直々の依頼ならギルドマスターが受けたって問題はないし、言わさない。あぁ、これで事務仕事から解放されるっていうもんだね」
よくわかんないけど、ギルドマスターが僕に色々教えてくれるっていうことでいいのかな。事務仕事って、お父さんとお母様がしている仕事のことかな。そんなことしたら他に困る人が居るんじゃないのかな?
「仕方ない、後でギルドに詫びの品を届けることにしよう。そんなことで恨まれるのはかなわん」
「そうしてくれると、私も正々堂々と依頼を受けられるねっ。」
やっぱり、僕のせいでギルドの人たちに迷惑がかかるみたい。いいよって言われてるけれど、早く一人前になれるように僕がんばるよ。
「それで、カナタはどれぐらい戦えるんだい?」
「私にはわかりません。お父様、わかりますか?」
そういえば僕、戦ったことないや。いつもお母さんと一緒にいて、たまに御母様とお父さんが僕を怖い顔、鬼の形相? ていう顔で追いかけてくるのを必死に逃げるぐらいの運動しかしてないや。
「戦闘力はわからんが、少なくても、私が本気を出さねば捕まえられないぐらいの身体能力がある。」
「そいつはすごいね。それだけの身体能力と体力があるなら、色々とやりようがあるね。ただ、さすがの私も猫に戦い方を教えたことなんてないんだけどね」
僕、すごいの? あ、ギルドマスターが撫でてくれた。ゴロゴロ。ちょっとお母さんより固くて大きい手だけどお父さんの手よりはごつごつしてない。
「猫系のモンスターをテイムしているテイマーがいればよかったんだけど、生憎とここを拠点にしている冒険者でテイマーはいないね。まぁ、でも、人と筆談とは言え、意思疎通がとれる子だ。そこまで苦労はしないかもしれないね」
「そうだといいんですけど。カナタは、猫なので・・・・・・その」
「そうだ、カナタは猫故に好奇心が強くて、何か気になることがあればそれに集中してしまう」
「なるほど、子供冒険者と思って指導させてもらおう」
僕、気になることがあったらついついそれに気を取られちゃうんだよね。でも、冒険者になるんだから気をつけないとっ。
「そうしてくれると助かる。さて、先に依頼書を書くとしよう。ユリア、書き方を見ておけ。お前が今後ギルドを使うことがあるかもしれん。その時の為に覚えておくように」
「はい、お父様」
お父さんとお母さんが受付のカウンターで何か書いている横で、僕はギルドマスターに何故か抱きかかえられていた。抱っこされるのは好きだからいいんだけど、抱っこされてたら僕、上手く字を書けないよ。
「これで、依頼は受諾されたよ。さて、下から二番目のクエストまで受けることが出来るから、何か討伐系のクエストを受けることが出来る。今回は常設のゴブリン退治といこうか」
常設って何だろう?
「カナタ、ずっと出されているクエストのことよ」
常設はずっと出されているクエスト。僕、覚えたっ
「そうだよ、常設クエストは常に出されているクエストで、特に受付をする必要は無い。倒したらゴブリンの魔石をギルドに持ってきたらいい。ただ、ゴブリンの魔石はあんまり質がよくないから、あんまりお金にはならないよ」
頑張ってもあんまりお金にならないんだ。それはちょっとやだなぁ。
「安いといっても、五匹も倒せばココなら食事付きの宿に泊まれるからね」
「カナタ、ゴブリンはすぐに増えて人を襲う。でかい群れになれば、村一つぐらい簡単に全滅させてしまう。だから、出来るだけ倒してくれるとありがたい」
お父さんがそう言うなら僕、ゴブリンを見つけたら頑張って倒すよ! でも、ゴブリンってどんなモンスターなのかな? 僕、見たことあるかな?
「じゃあ、カナタ行くよ」
「気をつけてね、カナタ」
お母さん →ユリア
お母さんのお母さん→ユリアのお母さん
お父さん →ユリアのお父さん
ところで、ギルドマスターの名前なんにしよう(ぁ