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05/21/0955
誤字脱字報告ありがとうございます。
該当箇所の修正しました。
僕は今、お母さんの膝の上に乗せられて馬車に乗っていた。時間はお昼より少し前の時間。冒険者ギルドが比較的すいている時間。僕は窓の外を覗き見るお母さんに撫でられて、その手に顔を擦りつけながらゴロゴロいっていた。お母さんの手は僕の頭を撫でて、耳の後ろや顎の下を撫でてくれて、僕の耳を握るようにしてコリコリとしてくれるのが気持ちよくて僕は幸せいっぱいにゴロゴロ言っていた。
「この辺りにくるのは久しぶりね。」
お母さんは僕を撫でながら窓の外を覗き込む。お母さんは貴族と呼ばれる地位? だからこうやって外に出かけるときは何時何時までに行きますよって手紙を出した上で、先触れを出すのが普通らしいんだけど・・・・・・お母さんは身体が弱いから先の予定が立たないから冒険者ギルドに手紙を出してないし、面倒くさがって領主が通るから道を空けろっていう為の共も連れてきてない。
だから、僕たちが通る時いつもは道を空けて頭を下げている人々がこうして町に出てきているお母さんの顔をみて驚いて、慌てて道を譲って頭を下げている。僕、なんか悪いことをしている気分になっちゃったよ。
「ちょっと、わくわくしてきたわ。」
お母さんが本当にわくわくしているのが弾んでいる声から伝わってくる。僕もいよいよ冒険者になれると思うとわくわくが止まらないよ。だって、あの日家に帰って翌日にさぁいこう! ってしたらお母さんの体調が悪くなっちゃってあれから三日も冒険者になるのをお預けされちゃったんだ。
「さぁ、中に入ろうか。」
お父さんに手を取られて、ギルドの中に入っていく。僕? 僕はとことこ歩いているよ。僕がギルドに行った時はもっと人が居たんだけど今はあんまり人が居なくて受け付けのお姉さんが言っていた通りすいていた。
「お待ちしておりました。奥の部屋へどうぞ、領主様。ギルドマスターが用意しています。」
「別に領主として依頼を出しに来たわけではないのだから、そこまでの対応は求めていなかったのだが。」
そう言いながらお父さんはお母さんと一緒にギルドの人に連れられて奥の方にある部屋へと通される。僕も二人に置いて行かれないように小走りでついていく。
通された部屋は個室で、入った瞬間に僕の毛がぶわってなったのがわかった。あ、これは魔法の気配だ。でも危ない感じはしないから大丈夫だと思うけど、これって何の魔法かな?
「ギルドマスター、今日は娘の登録をするためにやってきた。よろしく頼む。別に娘の登録さえ出来れば良かったからお前でなくてもよかったんだが。」
「あら、戦友がわざわざここにくるっていうんだもの。何時も用事があるときは手紙を送るだけの貴方が。私が直々に出てくるに決まっているじゃないの。それに貴方の娘の登録でしょう? なら、一応私が見ておかないと。将来有望かもしれないし。」
お父さんがギルドマスターって言っている人は女の人でお母さんほどではないけれど強い魔力を感じる。どうやら、この部屋に魔法をかけているのはこの人みたい。でも、戦友って何だろう? お父さんの反応を見ると仲がいい人ってことかな?
「ユリア、期待されているようだ。よかったな。」
「娘のユリアです、今回は私の登録のためにわざわざお忙しい中時間を割いて頂きありがとうございます。ですが、私は・・・・・・」
「その話しは手紙で聞いているし、魔法使いの使い魔が主人に代わってクエストを代行するのはない話しでは無いね。あまり聞かないだけで。」
じゃあ僕みたいなのが他にもいるのかな。会ってみたいな。僕はちょっとわくわくする。どんな事をいつもやっているのか知りたいな。僕、お母さんの周りでゴロゴロしているのがお仕事だから普通の使い魔っていうのが何をやるのかわからなくて。
「そう、なんですか?」
「一つ、使い魔に全てを任せてしまうと人間を介さない事で発生するトラブルがある。これは使い魔がどれだけ頭がいいのか? という問題と、どういう風にモノを考えるのか? 使い魔は人間ではないから、人間と同じように考えるとは限らない。という問題がある。もう一つは、よほど優れた魔法使いが作る使い魔でないと魔力効率が悪い。という問題がある。元々使い魔の素体となる魔物、動物が居ればこの点は乗り越えやすいけど、人間と同じようにモノを考えて判断し、行動してくれるのか。という問題が起こりやすくて、錬金術などを用いた使い魔を使う場合は、どうしても脆くなりやすい。それを補おうとしたら魔力を馬鹿みたいに喰う。という話しさ。」
僕はきょとーんとしながらお母さんの方を見る。僕、猫だからよくわかんなかった。
「カナタ、貴方がすごいということよ。」
僕、すごいの? やったー! 嬉しくなってお母さんの脚に僕は顔を擦りつけるその上からギルドマスターの声が聞こえる。
「そういう話しではないんだが、まぁいい。それで、登録の話しだが。」
「あぁ、きちんと用意してあるよ。でも、実際にこの娘を見ているときちんと登録出来るのか不安になるね。使い魔のカナタ、だったか。あの子を見る限り相当魔力量が多いだろう。カナタに馬鹿みたいな魔力量を流していて、それでもまだまだユリア自身に魔力量に余裕がある。」
「私、登録出来ないんですか?」
「登録は出来る。ただ、魔力を登録するための道具がユリアの魔力に耐えられるかわからない。魔力量を計るわけではないから、ちょっとだけ魔力をこいつに流してくれればいい。」
お母さんがギルドマスターに何やら透明な玉で大きな玉を渡される。じっと下から覗き込むと、僕の顔がゆがんで映っていた。何コレ、面白い! 僕も触りたいなぁ。でも触らせてくれないだろうなぁ。うずうずとしながら僕はお母さんの脚にべったりくっつきながら香箱座りをする。
お母さんが透明な玉に魔力を流しているのを感じる。
「もう少しなら流しても大丈夫だ。その方が登録作業がすぐ終わる。」
そうギルドマスターが言った瞬間、玉にひびが入って、砕けてさらさらと光る粉になって消えた。玉、なくなっちゃったけど、大丈夫なの?
「す、す、すみませんっ!」
「いや、私が余計なことを言ったのが悪かった。元々、魔法を使えるほどの魔力を持っていない人間の魔力も登録出来るモノだ。単純に時間をかければよかったこと。ソレを時間短縮しようと思って余計なことを言った私の落ち度だ。」
登録はきちんと出来たのかな? 玉、なくなっちゃったけど。なくなっちゃったら登録出来なくて、冒険者になれないんじゃないの?
「登録は・・・・・・どうやら、何とか出来たらしい。いやはや、まさかアレが壊れるほどの魔力量を持っているとは。しかも、これでレベル1か。先が恐ろしい娘を持ったもんだね。」
ギルドマスターはごそごそと棒みたいなモノを取り出してソレを見ながらいう。なんだろう、アレ。なんか、気になる。カジカジしていいかな? 駄目かな?
「自慢の娘だとも。まぁ、ただ、魔力がありすぎるせいで病弱になってしまったが。レベルが上がって身体が丈夫になれば普通の娘のように外に出られるようになるかもしれん。」
「そうだといいねぇ。はい、ユリアこれが冒険者の登録票だ。首から下げておくと良い。仲にはブレスレッドみたいに腕に巻き付けるやつもいるけど、それは好きにしな。それからこっちが使い魔のための登録票さ。」
お母さんが登録票を二つ受け取る。
『カジカジしちゃ駄目?』
「器用な使い魔だねぇ。喋れない代わりに文字が書けるとは。あぁ、これはカジカジしちゃ駄目。おもちゃじゃないんだから。大事に持っておくんだよ。」
かじかじしちゃ駄目なの?
「カナタ、後で渡してあげるけど噛んじゃ駄目よ? ちょいちょいして遊ぶのも駄目よ。」
「にゃぁ!」
僕、良い子だからお母さんの言ったことちゃんと守れるもん。
「さて、これで登録作業は終わりだよ。」
「何か、書くことはないんですか?」
「ソレは私が先に手紙と登録用紙を同封しているから問題は無い。」
「そもそも、文字をきちんと読み書き出来るやつが少ないからね。代筆でも問題はないんだよ。尤も、この領地では他に比べると識字率が少しはましなようだけど。」
あ、それお母さんが時々人形劇をして皆に勉強しなさいって言ってるからだ。簡単な読み書きも出来ないと損するよっていう内容でしてて、ソレを見た子どもも大人たちの意識に変化があった。とか、なんかお父さんが言ってた。それから、人形に声を吹き込む声優ってお母さんが言ってたけど、その声優をやってる兵士とかメイドさんも人気があるんだって。
「じゃあ、登録も終わったことだし実際にクエストを受けてみるかい?」
「カナタ、早速やってみる?」
『やるっ!』
Twitterアンケートでこの作品の更新に票数が集まらなくて、冒険に出られないカナタくんが私の頭の中でしょぼーんとしている姿が思い浮かびました。そして、ついに冒険に出られるというところで、ぶった切られるという。