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怪談 しゃれこうべ  作者: 小山志乃
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アカマタの噺

本日からテーマを某アニメの「妖怪四十七士」に据えて書いて参ります。


海の妖怪はもう少しいるのですが、いかんせん海が舞台になり過ぎる。。当然と言えば当然ですが。


 東京を江戸と申した時分のお話。


 琉球のある村に一人の娘がおったそうな。


 この娘、国で一番と言っても過言ではないほどの美貌を持っており、村の男達は勿論、土地の権力者までもが娘に結婚を申し込むまでになっていた。


 けれども、娘の操は堅くどれほどの金を積まれようと、宝物を送られようとも突っぱねていた。そんな様子に、娘の両親は嬉しいような、心配のような何とも言えぬ心持ちで過ごしていた。


 ところが。


 そんな娘に男が出来たのだった。その上にすでにその男の子を孕んでいるという。


「この方と結ばれたいと思っています」


 突然に娘に連れてこられた男を見て、両親は驚いた。


 上質の着物に身を包み、顔立ちは絵に描いたように眉目秀麗、かと言ってか細さは感じさせぬ体躯と覇気を兼ね揃えた、正しく非の打ち所のない男であったのだ。


 話をしてみても学を感じ、それをひけらかす様子もまるでない。結納として持参した品々も、いずれ劣らぬ逸品ばかりであり、両親は反対する気すら起きなかった。


 しかし、一つだけ気掛かりなこともあった。何を聞いても流暢に返す男が、今の住まいについてだけは頑なに口を閉ざしていたのである。


 その事が妙に頭に引っかかった両親は、男が帰る際に隙をみて着物の裾に糸を通した針を素早く縫い込んだ。頃合いを見てそれの跡を付けてみると、糸は村はずれにある山の中に入り込んでいる。月明かりを頼りに、両親は更に糸を手繰って進んで行く。すると、やがて山中の洞窟へとたどり着いた。


 薄気味の悪い雰囲気の中、両親は息を殺して周りの様子を窺っていた。すると何やら話し声が聞こえてきていた。


「孕んだ娘に白浜の砂を踏ませるな、子が流れるぞ」

「孕んだ娘に白浜の砂を踏ませるな、子が流れるぞ」

「孕んだ娘に白浜の砂を踏ませるな、子が流れるぞ」


 しきりにそんな声が聞こえてくる。


 恐る恐る洞窟の中をのぞき込むと、まるで火を焚いているかのように明るく中の様子が見通せた。


 ◇


 そこにいたのは十数匹の『アカマタ』であった。


 アカマタは蛇の一種で毒は持たぬが、昔から化ける力を持ち、人を騙すと伝えられている。


 恐らくは一族であろうアカマタ達が車座になって話し込んでいた。目を凝らせば、一匹の蛇の尾に若者に縫い込んだ針と糸がくっ付いている。両親は恐ろしさを必死に堪えてその場を後にした。


 家に戻るとすぐに娘を連れて海辺へと向かった。アカマタ達が言っていた「孕んだ娘に白浜の砂を踏ませるな、子が流れるぞ」という文句を聞いていたからである。


 娘は事の次第が分からぬままであったが、両親があまりの気迫で迫るので、仕方なく白浜の上で足踏みを始めた。すると娘の顔色が変わり、なんと蛇の子をいくつも産み落とした。


 ◇


 やがて全てを聞いた娘はその場に泣き崩れ、流れた蛇の子の死骸を抱き寄せた。両親が引き離そうとしても、娘は頑なに抵抗した。


「娘よ。お前はアカマタに騙されていたのだ」


「そんな事はありません。例え蛇の身であったとしても、私とあの方とは互いに思い合っておりました」


「まだ分からぬのか。正しく蛇の毒牙に食まれる寸でのところで助かったのだぞ」


「いいえ、父上。アカマタは毒を持たない蛇なのです」

読んでいただきありがとうございます。


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