しらみゆうれんの噺
東京を江戸と申した時分のお話。
ある若者が日の出前から漁の為に沖合に出て行った。始めのうちは恙なく漁の支度をしていたのだが、その内に海面がにわかに青白く光っている事に気が付いた。
何事かと目を凝らして見ていると、その光は次第に集まりほつれた糸とのような細長いものが船の周りをぐるぐると回り始めたという。それはどんどんと折り重なり次第に大きくなっていく。が、不思議と怖いという気持ちにならず、いつしか霧のように散ってしまった。
◇
浜に戻った若者は、長のところに出向いて早速今日の出来事を話した。
長は感慨深いような、懐かしいような顔をして若者に言った。
「それはな『しらみゆうれん』というお化けの光だ。心配しなくても別に悪いことは起こらん。昔はしょっちゅう見かけたが、最近はトンと聞かなかったなぁ・・・そうか、まだいたんだな」
その言葉に若者も少々哀愁を感じてしまった。
夜になり友達に誘われるままに、酒を飲みに行った。そして、しらみゆうれんの事を酒の肴にしようよ語り出したのだった。けれども、その手の話は好かないのか友達は顔をしかめてしまった。
「そりゃあ、何ともキミの悪い話だな」
「いや、黄味じゃなくて白味の話だよ」
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