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雪婆の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
愛媛の吉田町の辺りが冬になり雪が積もると、その上に片脚だけの足跡が付くことがあった。
吉田村の人々は、その足跡の主は『雪婆』だと信じていた。雪婆は雪の降る日に現れ、親の目から離れている子供を攫ってしまうと言われており、大人たちは雪の降る日に子供が外で遊ぶことを戒めていたそうな。
◇
雪婆は妖怪の中でも特に長い年月を生きてきた。
その老々たる様は、威厳を通り越して侮蔑されるまでになっており、山に住まう妖怪たちもいつも馬鹿にする始末であった。
「雪婆ももう年だね。片足を棺桶に突っ込んでいるよ」
「それじゃあ、もう全部はいっているじゃないか」
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