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納戸婆の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
古い家の納戸には『納戸婆』という妖怪が潜んでいてると考えられていた。
家人が納戸を開けて中を掃除しようとすると、「ホーッ」というような大きな声を上げたり、素早く床下に入り込んだりして家事を驚かすという。
◇
とある田舎の家では毎年のように納戸を開けて、中を掃除する事を常としていた。
その家の子供たちは、納戸婆の事を恐ろしく思っており納戸を掃除する時期になるのが堪らなく嫌であった。
親父はそんな子供たちにほとほと困っていた。
「毎年の事じゃないないか。いつになったら納戸婆になれるんだ?」
「相手は納戸婆だ。なんど見てもおっかねえ」
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