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柳婆の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
柳の木は霊性が高く、他の木よりも化けるものだと考えられていた。
『奇談類抄』という本によると、かつて常陸国の鹿島に樹齢千年を超す柳の木があったという。その柳の木は霊性を帯び、時として老婆の姿を取って人を惑わしており、これを人は『柳婆』と呼んでいた。
◇
ある時。
鹿島にかつてない程の大雪が降った。
流石の柳婆も耐えかねて、人の姿を取り助けを求めて人家を探した。
けれども雪は思ったよりも深く、柳婆は途中で力尽きて命を落としてしまった。
やがて雪が止む。
近くの者が柳の傍を通りかかると、柳は雪の重みですっかりとへし折れており、傍らには柳婆の骸が転がっていた。
そして呟く。
「こりゃユキ倒れだな」
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