風狸の噺
『風狸』とは夜な夜な風に乗り、木々の間を飛行すると言われる妖怪である。
カワウソくらいの体格で、目は赤く、短いが尾を持っている。体毛は黒く、豹のような模様が付いており、鼻から尾にかけて青い毛が生えているという。
鳥や蜘蛛、香木の香りを食べて生きているというが、人間に害をなすことはほとんどない。
妖怪らしく、刀で斬ろうとも火で焼こうとも決して死ぬことがない。しかし、頭蓋が弱点であり、頭部を強く打ち付けると息絶えてしまう。それでも風狸に向かって風が吹けば、たちどころに蘇るという。
◇
風狸はとある草を用いて狩りをする。
ある種の草を抜き、梢で羽を休めている鳥を目掛けてそれを投げつけると、何故か鳥が落ち、すかさず食すという。
一体、その草でどのような術を使っているのか。
とある若者が、真相を暴くべく風狸からその草を奪ったことがあった。
風狸は堪らず木に登って行ってしまった。若者ははよじ登って風狸を追いかける。すると風狸は草を使う事を諦めて、自力で鳥を狩ろうとしている最中であった。
若者は、ここぞとばかりに奪った草を投げつけてみた。
その途端。
鳥も風狸も若者も、全員が木から落ちて、目を回して失神してしまったという。
◇
若者が目を覚ますと、そこには風狸の姿はなく、食い殺された鳥の死骸と「野蒜」の草が散らばっていた。
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