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足まがりの噺
入院投稿最終日
東京を江戸と申した時分のお話。
ある所に悪戯好きな狸が一匹いた。
夜道を歩く人間を見つけると、術を使って足にまとわりつく。まとわりつかれた者は綿ようなものが突然絡んでくるので、驚いて足を退かそうとする。すると大抵、片方の足を取られたり、避けた方の足を木や石にぶつける。そうして転んだり、痛がったりする様をみて楽しんでいたのだ。
そうしているうちに、狸はいつからか『足まがり』と呼ばれるようになっていた。
◇
足まがりはそれからも人を化かし続け、気がつけばその辺一帯の狸たちの中でも一番の古株になっていた。
けれども若い狸たちは、足まがりをあまり好ましく思ってはいない。
長く生きているうちに頭はすっかりと固くなってしまい、若い狸たちからは陰でへそ曲がりと呼ばれる始末だったそうな。
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