小玉鼠の噺
内臓、鼠、と聞いたらこれしか思いつきませんでした。
東京を江戸と申した時分のお話。
北の国の猟師たちの間で恐れられていた妖怪がいた。
その姿はハリネズミのようで、一見人に危害を加えるような風貌には見えない。しかし、山中でそれに行き遭うと、まるまるしい体を大きく膨らませ、最後には鉄砲のような轟音と共に破裂し、自分の血肉や内臓をまき散らしてしまう。
猟師たちは、これを『小玉鼠』と呼んでいた。
小玉鼠は山の神の使いであり、爆発するのは山に入った人間が神の怒りに触れたからだと考えていた。なので、これに行き遭った日はすぐに猟を止め、山を降りなければならない。仮に無理矢理に続けたとしても、不猟になったり怪我をしたりすると言い伝えられていた。
◇
とある猟師が小玉鼠に出会い、運悪く破裂するところまで目の当たりにしてしまった。
五臓六腑が四散した様に血の気の引いた男は、その場で気を失ってしまう。仲間たちに介抱され、近くの山小屋まで運ばれたが一向に目を覚まさず、明け方までうなされ続けていた。
冷や汗をかきながら目覚めた男は、今の今まで見ていた夢の事を仲間に言って聞かせる。
親が病で死んだこと、仲間たちが山崩れで息絶えたこと、妻子が火事で焼け死んだことなど、聞いているだけで気が滅入るような夢であった。
「えらい夢を見たもんだ。けど、それは全部夢だから安心しな、オレ達もオメエの家族もみんな生きてるよ」
「ああ、そのようで安心したぜ。しかし、なんだってあんな夢見たのかねぇ」
「小玉鼠の内臓をぶちまけられて気を失ったんだ、仕方がねえことさ」
「どういうこった?」
「昔から言うだろ、夢は五臓の疲れだ」
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