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袖引きの噺
東京を江戸と申した時分のお話。
夕暮れ時に家路についていると、ふと誰かに袖を引っ張られる。誰だと思って振り返るが、そこには誰一人としていない。小首を傾げて再び歩き出すと、またしてもクイッと袖を引かれる。
これは『袖引き小僧』の仕業だと言われている。
◇
ある男が町の外れの家へと向かっている最中に袖引き小僧に捕まった。
それからというもの、袖引き小僧は毎日のように帰り道を歩く男の袖を引っ張った。
男には女房と子供がいたのだが、その子が五つを迎えた頃に母親共々病気でこの世を去っていた。なので、男は勝手に袖引き小僧がまるで自分の子供なのではないかと考えるようになっていた。
ところがある日、仕事が上手くいかずに苛立っていた男はいつものように袖を引いてきた袖引き小僧に辛く当たってしまった。
それっきり、袖引き小僧が男のもとに現れることは無くなった。
男は袖引き小僧を袖にしてしまったことをしばらく後悔していた。
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