夜雀の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
とある山の裾野に住まう者たちの間に『夜雀』という妖怪の噂がたった。
夜になって山道を歩いているとその名の通り雀のようにチッチッチという鳴き声と共に現れ、まとわりつくように飛び回りついてくる。
村人たちの間では、夜雀に行き遭うのは不吉なこととされ、うかつに触れようものならたちどころに目の光を奪われてしまう。なので夜雀を知る者たちは、
「チッチッチと鳴く鳥を、はよ吹き給え、伊勢の神風」
というまじないを唱えて退けていた。
◇
ある日の事。
旅の者がこの夜雀に行き遭い、何も知らない彼はうっかりとそれに触ってしまった。
案の定、さっきまで見えていた景色が途端に暗くなり立ち往生してしまう。ところが、それと同時にチャリンチャリンという音まで聞こえてきた。
落ち着いて提灯に火を灯し、辺りを見回してみる。
するとそこには無数の小銭が散らばっているばかりだった。
旅人はそれの中の一枚を摘み上げ言った。
「・・・鳥目という事か?」
読んでいただきありがとうございます。
感想、レビュー、評価、ブックマークなどして頂けると嬉しいです!




