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竹切狸の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
江戸の外れの竹藪に『竹切狸』が出るようになった。
夜中にその竹藪近くを通ると、チョンチョンと竹を切る音が聞こえてくる。その内に。今度はミシミシと竹が切り倒される音まで聞こえるのだそうだ。
こんな夜中に誰が竹を切るのだろうかと様子を見に行くが、竹藪には誰もおらず、それどころか倒れた竹など一本も見つからない。そんなことが度々起こっていた。
誰かが狸の仕業であろうと言った。近くを通る者は不思議にこそ思ったが、特に悪さをされることなどはなかったので、次第に慣れてしまった。
◇
ところが。
別段、何かをしたという訳でもないのに、ある日を境に竹切狸は一向に現れなくなってしまった。中には竹を切る音が聞こえぬと、哀愁にかられる者もいたという。
何故、この竹藪に現れたのか。
何故、急に竹を切る音がしなくなったのか。
真相は藪の中である。
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