表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪談 しゃれこうべ  作者: 小山志乃
304/365

ひょうとくの噺


 東京を江戸と申した時分のお話。


 あるところに心の優しい爺様がいた。爺様は山へ芝刈りに行くと、その途中に奇妙な穴が開いている事に気がついた。


 ふと、穴の事がどうにも気掛かりになりに取って来たばかりの柴をその穴に詰め始めたのだった。そうしているうちに、穴の中から不思議な声が聞こえてきた。すると爺様は穴の中に吸い込まれるように消えてしまった。


 爺様はそこで見た事もない程美しい女に会った。


 女は、柴のお礼と言って爺様に「火男」という醜い男の童を渡してきた。爺様は得体の知れない童を預かるのは嫌だといった。しかし、


「この火男は貴方様に必ずや富をもたらします。どうかお受け取りください」


 と、強く圧してくるので、とうとう断ることができなかった。


 ◇


 家に帰ると、意地悪な婆さんは柴の代わりに汚い童を連れてきたことをひどく責めたてた。


 ところが、その火男は毎日三粒の金を臍から出すのである。しばらくたつとその辺りでは一番の長者になり、女の言った通りの富をもたらした。爺様はその頃になると、金を出す事よりも何とも言えない愛嬌のある火男のことを気に入っていた。


 ある日の事。


 爺様が柴を刈りに出かけた時の事。欲にかられた婆様が火男の臍を火箸で無理につついて金をほじくり出そうとした。が、あまりにも無理矢理につついたせいで火男を突き殺してしまったのだった。


 帰ってきて悲しみに暮れる爺様であったが、その日の夜に死んだ火男が夢枕に立ち自分の顔を模した面を作り、それを飾れば同じく家は反映するだろうと言い残した。


 これが後にいう「ひょっとこ」の面の生まれた訳である。


 ◇


 火男の臍を突いて殺してしまった婆様は、その後臍を噛んで悔しがったという事だ。


読んでいただきありがとうございます。


感想、レビュー、評価、ブックマークなどして頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ