273/365
貝児の噺
東京を江戸と申した時分のお話。
この頃の武家の嫁入り道具の中には貝桶というものがあった。貝殻の内側に絵が描かれた一対の二枚貝同士を合わせる、貝合わせという遊びがあり、その為の貝を入れておくのが貝桶である。
貝合わせは高貴な家の女児にとっては定番の遊びであり、その為代々嫁入り道具として貝桶を持たせることも珍しいことではなかった。
そうして長年に渡り貝桶が霊性を帯びて、妖怪と化してしまったものを『貝児』と呼んだ。貝児は夜な夜な現れては、貝桶の貝殻を取り出しては遊びに興じるのだという。
◇
この貝児は妖怪の間でも、とりわけ美男であることで知られている。貝を合わせるためにいつも二枚目を持っているからだそうな。
読んでいただきありがとうございます。
感想、レビュー、評価、ブックマークなどして頂けると嬉しいです!




