化けの皮衣の噺
本日より『百鬼徒然袋』の妖怪たちを取り上げて参ります。とはいっても大半はもう書いてしまったのですが。。。
東京を江戸と申した時分のお話。
とある田舎の寺に悪戯好きな和尚が住んでいた。寺の小僧や寺男はもとより、檀家であっても手酷い悪戯にかかることがあるので、皆がいつも気を付けていた。
ある日の事。
和尚が暇を持て余して散歩をしていると、茂みの中に気配を感じた。恐る恐るそれを覗いてみると、一匹の狐が手拭いを被り変化の稽古に勤しんでいるではないか。
狐は上手い具合に人間の娘に化けることができたが、和尚に除かれているということまでは気が付かないでいた。その狐が茂みを抜け前から歩いてきたのを見た和尚は先手を打って狐を驚かした。
「化け方がなっていないのう」
そう言われた狐は驚きのあまり、うっかり正体を見せてしまう。すると和尚はすかさず言った。
「儂が狐に見えるかの?」
和尚に驚かされた狐はそれを聞いて再び驚いた。
「いえ、どこからどうみても人間です」
「そうじゃろうて。儂のこの変化の術はこの化けの皮衣でできたこの頭巾にある。ここで会ったのも何かの縁。若いお前さんの持っている手拭と頭巾とを交換してやろうか」
などと持ち掛けた。和尚の言葉を鵜呑みに信じてしまっていた狐は二つ返事にこの交換を承諾したのである。
◇
それからというもの。和尚の悪戯にはますます拍車がかかり、村ではただの頭巾を頭にかぶり、さも化けている風にして歩いていく狐がよく見かけられたということだ。
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