岸涯小僧の噺
苦しいオチ。そもそも岸涯小僧の伝承がなさ過ぎるのがいけない。
東京を江戸と申した時分のお話。
江戸の町に数ある船着き場は「雁木」と呼ばれる階段状の形をしていた。そうすることによって、潮の満ち引きや大雨での河川の増水などが起こったとしても、岸の高さを自然に調節できたのである。
また晴れた日には船乗りや近くで働く者たちが、その雁木に腰掛けて休む。すると自然に人が集まるので振り売りや屋台が増え、昼は中々の賑わいを見せる。ところが、その反面。夜になると打って変わって人気がなくなり、賑やかしさの反動でより寂しく、また薄気味悪く見えた。
この『岸涯小僧』とは、人間が感じるそんな気味の悪さから生まれたような妖怪である。
岸涯小僧は文字通り、雁木やその傍に止めてある舟の上でよく見かけられた。岸辺を決して離れることはなく、魚を手づかみで取り鋭い歯でバリバリという音を立てながら貪り食うのだそうな。魚の骨を噛み砕くその音は一町ばかり離れても耳に届くと言われた。
◇
Q 岸涯小僧は魚を食べる時はしゃがみ込んで、決して立ち上がることはないのだが、それは何故か?
A 河岸で食べているから。
読んでいただきありがとうございます。
感想、レビュー、評価、ブックマークなどして頂けると嬉しいです!




