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天逆毎の噺
一説によれば『天逆毎』とは、須佐之男命が己に溜まった猛気を吐き出した際に生まれた古い神であるという。気が荒く、何事も自分の思い通りにならなければ気のすまない性格である上に、誰かが右と言えば左と返し、上と言えば下と言う具合に何事にも反対の答えを返す。
◇
ある時の事。
従者の妖怪が天逆毎の大切にしていた宝物をうっかりと壊してしまった。けれども、怒るようなことを仕出かしても天逆毎であれば反対に喜ぶのではないかと思って、素直に謝りに行った。
が、天逆毎は烈火の如く怒り、七日七晩狂ったかのように暴れまわったという。
従者は仲間に仔細を打ち明けた。
「怒るような事をしたから反対に褒められるかと思ったんだけどな」
「それはきっと、あの方の逆鱗に触れちまったからだろう」
「けど、その逆鱗だってあべこべになるはずじゃないか?」
「逆鱗には「逆」の文字があるだろう? あべこべの反対はつまり元通りってこった」
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