鵺の噺
後の世で平安と呼ばれる時代のお話。
清涼殿に毎夜、不気味な鳴き声が聞こえ、時の天皇が悩まされていた。正体不明のその声はまるで鵺鳥のようであり、次第に『鵺』という名で知れ渡っていった。
その心労からか、天皇はとうとう病に伏せるようになってしまい、側近たちはその原因を夜に聞こえる不気味な声の持ち主の呪いであろうと考えた。
そこで、弓の名手で知られる源頼政に化け物退治を命じたのである。
頼政は早速家来を連れ、先祖伝来の弓を携えて化け物退治へ繰り出した。例によって不気味な声が清涼殿内に響くと、その屋根の上ににわかに黒雲が立ち込めてきたのを見た。その雲を目掛けて、頼政が山鳥の尾であつらえた矢でいると、悲鳴と共に何かが二条城の北へと落ちていった。すかさず家来が向かうと、化け物が息も絶え絶えな姿でこちらをにらんできたという。
その化け物は何とも奇怪な姿であった。
頭は猿、胴は狸、手足は虎、そして尾は蛇となっている。
鵺は一抹の抵抗を見せたものの、頼政の矢が致命傷となっており、すかさず一太刀の元に切り捨てられてしまった。すると宮廷の空に郭公の声が響き渡り、すぐさま静けさが辺りを支配した。
その後天皇の容態も快復し、頼政の名はより知れ渡ることになった。
◇
退治された鵺は、その後祟りを恐れた人々の手によって骸を船に乗せられ、鴨川へと流された。
船はそれから淀川を抜け、大阪を通り越して海へと出て行った。末に船は芦屋の浜へと辿り着き、そこで塚に丁重に祀られたという。
◇
怨みをもって京都を出た鵺であったが、芦屋についたの後は人々を祟ることはなかった。
船で芦屋につくまでに、散々コウカイしたからだそうな。
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