表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪談 しゃれこうべ  作者: 小山志乃
207/365

片輪車の噺

史料にある妖怪の名称をそのまま使用しております。


差別を助長したり、不特定多数の身体障ガイ者を誹謗する意図はありませんことをご理解ください。


 東京を江戸と申した時分のお話。


 近江の国の出来事である。


 とある村で『片輪車(かたわぐるま)』という妖怪が夜な夜な道を徘徊するようになった。


 それは片方の車輪が取れた大八車に鬼の形相をした女が乗っており、その全身は炎に包まれているという。


 片輪車を見た者は呪われて必ず不幸な目に遭うと言われており、人々は口々に噂し合い、夜は戸を固く閉じて早々と寝入ってしまうようにしていた。


 ◇


 ところが。


 ある子持ちの女房が怖いもの見たさから、夜中に現れた片輪車の姿を行使の隙間から覗き見た。


 すると片輪車は真っすぐに女房の方を睨み、そして告げた。


「馬鹿な女め。私を見るより我が子を見ろ」


 そう言われてハッとした女房は隣の部屋で寝かしつけていたはずの赤子を見に行った。だが、赤ん坊の姿はどこにもなく、再び片輪車に目をやると自分の子供を抱えて、何処に走り去ってしまった。女房は嘆き悲しみ、次の夜に和歌を一首書き上げて表の戸に張り付けて、片輪車の現れるのを待った。


罪咎(つみとが)は 我にありこそ 小車(おぐるま)の やるかた分からぬ 子をばかくして』


 そして夜も更けた頃に現れた片輪車は、その和歌を声に出して読み上げた。


すると。


垂乳根(たらちね)の 情けに(ほだ)され 小車の さらば去りけり 夜も人知れず』


 と返してきた。


 ふと見れば、片輪車に攫われた我が子は家の中におり、片輪車は再び世の闇の中に消えてしまった。


 その村では二度と片輪車はハイカイすることはなく、またそれを見た者もいなくなったということだ。


読んでいただきありがとうございます。


感想、レビュー、評価、ブックマークなどして頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ